第91話 3人
「時雨さん各国の部隊長を連れて参りました!」
普通の兵士とは違う鎧に身を包んだ者が三人、縄で縛られ連れてこられる。
この三人は言わずもがな今回、時雨さん達がいる地下都市を攻めてきた三都市の兵士の隊長を務めている、いわゆる時雨さんのような存在だ。
「ご苦労」
それぞれ時雨さんの目の前に連れてこられ地面に座らせられる。
三人共どこか苦痛の表情を浮かべており、時雨さんに目を合わせる様子は一切なく、未だ反抗の姿勢を見せていた。
「お前達が部隊長でいいんだな?」
視線すら合わせようとしない者達に時雨さんはぐっと近づき問いつめる。
すると、三人の内の一人がようやく時雨さんに目を合わせる。
「裏切り者には何も言うことはない!」
そして一言、叫ぶだった。
他の二名も賛同するようにゆっくりと頷く。
三人のそんな態度に時雨さんは困ったように頬を掻く。
「一体どうすれば……」
対応に困ってしまいなんて声をかければいいか分からずにいるようだった。
「俺に任せて下さい」
とそこに康生が口を出してきた。
「康生。でも……」
ここは部隊長としての役割を果たそうとしたのか、康生を止めようとする。
だが康生は「任せて下さいよ」と言ってそのまま三人の前に移動した。
「少しだけお話聞いてくれますか?」
康生は三人の目の前にしゃがみ、じっと顔を見つめる。
すると時雨さんの時とは違い、今度は怯えるように顔を逸らす。
それほどまでに康生の存在は先ほどの戦闘で脳裏に焼き付かれたのだろう。
「さっきは裏切り者っていいましたよね?どうしてそう思うんですか?」
それでも康生は言葉を続ける。
「そ、それは……」
先ほど時雨さんに啖呵をきった一人が口ごもる。
康生はその先を促すように顔を向ける。
やがて観念したかのように口を開く。
「この地下都市は我々人類を裏切った。だから制裁を加えないといけないと言われたからだ!そ、それに制裁を加えた地下都市には報酬がでると言われて……」
「なるほど、やっぱりそういうことか」
話しを聞いた康生は納得したかのように立ち上がる。
「なるほど?」
立ち上がった康生を見て時雨さんは疑問に思い訪ねる。
「いえ。ただ、今までの攻撃がどれも地下都市単体だったから考えていたんですよ。普通裏切っているとなったら全都市共同でここを攻撃する作戦を立てるはずです。でもそれをせずに地下都市単体、今回は複数の地下都市が合同だったけど、そのわりには連携があまりとれないようにみれたので、おおよそそんなことだろうと思っていたんですよ」
康生の説明を聞き、時雨さんはなるほどと考える。
「さて、それじゃあ頑張って説得をしようか」
康生は三人をじっと見つめて言う。
「――私も手伝うよ」
とそこにエルが現れた。
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