引き篭もって10年間〜外に出たら世界が滅んでいました〜

第69話 処刑

　パンッ！

　宙に浮く康生に向かって銃声が鳴り響く。

　康生はもう空中で身動きをとることが出来ない。

　まさに絶対絶命の場面。

「くそっ！」

　すでに弾を避けることが出来ないと判断した康生は腕につけているグローブを前に出す。

　避けられないのなら少しでも軽減すればいい。

　そう判断した康生は腕を振りかぶりながらいっきにグローブの力を解放する。

　ガンッ！

　鈍い音が響く。

　グローブの最大出力が銃の弾にぶつかる。

「いっけー！」

　康生は叫びながらもさらに拳を前に出す。

　ピシッ。

　しかし突き出すグローブから鈍い音が響く。

　流石に至近距離の弾をはじき返すには強度が足りなかったのだろう、グローブの先端から音を立ててヒビが広がる。

　しかしそれでも弾の威力も軽減された。おかげで軌道もずらせたことを確認した康生はすぐさま反撃の準備をする。

　ポーチからペンを取り出しすぐさま隊長の頭めがけて放つ。

　パンッ！

　その時一つの音が響く。

　それは康生のペンから発せられた音ではなく、銃から発せられたものだ。

　康生がペンを放つ前に隊長が再度銃を放ったのだった。

「うっ！」

　銃から放たれた弾はみるみるうちに康生の体へと吸い込まれていき、やがて康生の横腹へと命中。そのまま肉を突き抜け、骨を砕き、背中から再度姿を現す。

「がぁはっ！！」

　弾が貫通する頃にようやく康生の体に痛みが伝染する。

　康生はそのまま血を吹き出しながら地面へと吸い込まれていく。

　パンッ、パンッ、パンッ、パンッ！

　康生が地面に落ちてくると同時に四つの銃声が鳴り響く。

「がっ！！」

　再度康生の悲鳴が響いたかと思うと、康生の手足の四肢から血が吹き出る。

「これでもうあなたはなにもすることが出来ない」

　手足を撃たれたため、康生はもう動かすことが出来ない。

　それこそ力を入れてしまえば激痛が伴うだけ。

　おまけに腹からも血が吹き出ているので、やがて血がなくなり康生は死んでしまう。

　もはや戦う状況ではなくなってしまった。

「「康生っ！！」」

　前後から二つの声が康生を呼ぶ。

　だが康生はその返事に言葉を返す力すらも残っていなかった。

　ただ全身が燃えるような激痛を支配する体に康生はひたすら呻き声をあげるだけ。

　今の康生にはもう戦うことは出来なかった。

「さて、都長どうしましょう？」

　そうして隊長は康生を背にリングを移動する。「このままそこのガキとともに時雨の処刑を開始する！」

「はっ」

　都長は隊長に命令を出す。

「そしてこの娘じゃが、私が預かることにした。あとはお前に任せたぞ」

「承知しました」

「都長お待ちをっ！どうしてエルを連れていくのですか！？」

　都長の言葉に時雨さんが思わず声をあげる。

「処刑人は口を閉ざせ」

　そんな時雨さんの言葉に、都長の代わりに隊長が答える。

　そして時雨さんを囲うように兵士達が移動する。

「それじゃあ儂はもう行く。いくぞ娘」

「いやっ！放してっ！！」

　都長がエルをひっぱるが、エルは当然反発する。

「ええぃ！だまらんか！」

　都長がエルに向かって手を振り上げる。

「やっ…………」

　ぼやける視界の中で康生は必死に声をあげようとする。

　このままエルは連れて行かれ、康生と時雨は死ぬ。

　ドンッ！！

　誰もがそうなると思った時、広場中央の建物が大きく爆発したのだった。