第66話 レイピア
「それでは次は私の番ですっ!」
そう言って隊長は腕を振り上げる。
さっき康生を攻撃した時とは違い、その手にはしっかりと武器を握りしめている。
隊長が持っているのは細長い剣――レイピアのようなものだ。さらに背中には銃を背負っており近距離でも遠距離でも対応できるようだった。
「ほっ」
レイピアが振り下ろされるより前に康生は背後にバックして避ける。
しかし隊長の攻撃はそれだけでは終わらず、背後に飛んだ康生に向かって追撃が襲う。
「はっ!」
康生の体に突き刺さる寸前の所で、グローブを使って横に殴る。
グローブの風の力を使ったのでレイピアはたちまち隊長の手から離れ、地面に転がる。
カチャッ。
武器を失った隊長はそれでも動じることなく背中にある銃を構える。
「くそっ!」
パンッ!
攻撃を繰り出したばかりの康生に向かって銃声が鳴った。
どこにも逃げようがない康生はそのまま弾を食らう。――かと思われたが瞬時に康生はAIに命令を出す。
「飛ばせっ!」
『かしこまりました』
事前に決めていた定型文により瞬時にAIが康生の足に設置してある機能を機動した。
瞬間、風の力によって康生の体は空に向かって飛ぶ。
「銃相手に身動きのとれない空中に行くなんてバカなんですか?」
当然隊長は空中に飛んだ康生めがけて銃口を向ける。
しかし、
「そのぐらい分かってるさ!」
「……なるほど」
銃口を向けた隊長の動きが止まる。
それは康生に狙いを定めているわけではなくて、どこに撃てはいいか分からないからだ。
何故ならは空中には先ほど隊長が蹴り上げた煙幕が残っており、その煙幕が綺麗に康生を隠したのだった。
しかしそれでも空中にいることには変わらない。
「…………」
隊長は静かに煙幕から出てくる康生を狙うために集中する。
『もしこのまま離れた所に着地すればそれこそ不利になりますよ?』
「銃相手に遠距離に移動するなんてダメなことぐらい分かってる」
空を飛んでいるわずかな時間で康生は次の作戦を考える。
『見たところ相手は主に銃を扱うようですね。しかもその腕は相当なものです』
「そうだな。それでいて単純に腕力が強い」
だからこそ近接戦に持ち込んでも正直勝てるかどうか怪しいと康生は考えている。
近距離でも遠距離でもダメ。
まさに無敵。どうしようもない相手だ。
しかし康生はそれでも諦めない。
「なんたって俺には頼りな相棒がいるからな」
『正直言うと自分一人の力でやってほしいものですが……。まぁ今回は仕方ありませんね』
「あぁ、よろしく頼むよ」
そう言うと康生はそのまま残りの靴のパワーを使って煙幕の中から飛び出した。
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