第60話 証明

「冗談じゃない!」

 広場に響きわたるようなほどの音量でエルは叫んだ。

 エルがこんな大声を出すのを初めて見た康生はだけ驚く。

 同時にエル自身も冷静さを欠いてしまった事に驚く。

「――では証明してもらおうか」

 だがそんな事はお構いなしに男は言い放つ。

 瞬間、男は指をパチンと鳴らす。

 すると男の背後からおよそ十人の男達が走ってきた。

 その十人は男の背後に一列に並ぶ。

 その男達は皆それぞれ黒いローブを羽織っており、外見や図体などが全く分からないようになっていた。

「これはこの地下都市ではなく、全都市直属の兵士。そして私はこいつらの隊長を務めている」

 男が急に説明を始める。

 説明を聞きながら康生は考える。

 時雨さんはこの地下都市での隊長と言っていた。しかし目の前の男は全都市直属の兵士だといった。

 この世界の事がまだ分からない康生でさえ、目の前の人たちは時雨さんよりも確実に偉く、そして強いのだろうと直感した。

「私の部隊ではドラゴンでさえも倒すことが出来る。そこでだ。今からそこの子供と我々で戦おうじゃないか。そこでもし我々に勝つことが出来たら嘘を付いていないと認めよう。それでいいですか都長?」

 男は背後を振り返り都長に確認をとる。

 問いかけられた都長は途端に歪んだ笑みを浮かべる。

「それでよい。それならば確実にそのガキの嘘を暴けることが出来るからな。いいじゃろう。ここでそのガキを見せしめに処刑してみせよ!」

 都長はここでガキを殺すことにより、自身に刃向かう奴らの見せしめにしようと思ったのだろう。

 だが都長の言葉はそれだけでは終わらなかった。

「当然その場合はそこの女のガキも一緒じゃからな。それに時雨、お前もだ!」

 エル、さらには時雨さんまでもが呼ばれる。

「文句はないな?」

 咄嗟に康生は二人は無関係だと叫ぼうとするが、それよりも先に都長が二人に確認をとる。

 すぐに康生は二人に反対するよう言おうとするが時雨さんに止められる。

「私はそれで構いません」

「私もです」

 二人共臆することなく堂々と都長の言葉を認める。

「私を舐めるのもたいがいにせい!」

 都長は二人が恐怖に恐れおののく事を期待していたようだったが、二人は恐怖どころか康生が負けることすらも考えていないようだったので、怒りに顔を赤くする。

「ええい!ささっとやってしまえ!!」

 都長は真っ赤な顔で怒鳴り散らす。

「ということでいいなそこの子供よ?」

 隊長を名乗る男は刀を真っ直ぐ康生に向ける。

「――分かりました」

 今更康生が何を言おうが、この状況は決して変わることはない。

 そう思い康生はここで戦う事を了承したのだった。

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