第49話 俺が解決します

『私に考えがあります』

 AIが静かに宣言する。

 その言葉に康生やエル、時雨さんに背後に立っていた男までがスマホを見る。

 とにかくその場にいる者全ての視線を集めたAIは、それでも機械だからか全く動じることなく、ただ情報を集めた結果導き出された事を述べる。

『食料が無くなって暴動を起こしているのだから、人々に食料をあげればいいのですよ』

 AIは至極真っ当な事を述べた。

「いや、だからその食料は先日の事件で盗まれてしまったからないのであって……」

 真っ先に反論したのは後ろに立っていた男だった。

 そして当然それは正論であり、この場にいる誰もが思っていた事だ。

 そもそも食料があればこんな暴動が起こるわけがない。

 しかしAIも当然そんな事は分かりきっている。

 では何故そんな事を言ったのか。

 康生は少しだけAIに期待するようにスマホを見つめる。

『私がすぐに答えを出しても意味ないですからご主人様はよく考えて下さい』

「うぐっ……」

 どうやら期待しているのを見破られたようだった。

「い、いや、今はそんな事を言っている場合じゃ……」

 と時雨さんがAIにしゃべり掛けるが、AIは無反応だった。

(はぁ……)

 無反応をした事で康生は心の中で大きくため息を吐く。

 こうなってしまってはAIは何もいっても聞かないことを康生を知っているから。

 だからこそ康生は考える。

 そもそもAIがこんな事をするのは康生の成長を思っての事だ。康生自身もここに来てから自分の無力さを改めて痛感していたので、これは康生にとっても自身の価値を示すために大事なことだ。

「何か思いついた?」

 エルが顔をのぞき込むようにして尋ねてきた。

 当然そんなすぐに思いつくわけでもないので康生は首を横に振ろうとした。

 だがその瞬間康生は思い出す。今朝エルと食事をした事を。

 エルと二人で弁当を食べた。

 じゃあその弁当をどうやって作った?

(――なるほど)

 ここでようやく康生は気づく。AIが言っていた食料をあげればいい、という意味に。

「時雨さん今までの食料ってどうやって賄っていたんですか?」

 だからこそ康生は時雨さんに尋ねる。

「え?い、今までの?」

 最初時雨さんは戸惑っていたようだったが、すぐさま口を開く。

「今までは主に鶏の卵や肉、それにキノコなんかを配給していた。時には別の都市から米と綺麗な水なんかも手配されるが、何分川や海の水が汚染されてしまっているから畑なんかも作りようがない」

 その言葉を聞いた瞬間、康生はニヤリと微笑む。

「俺が食料問題を解決してみせますよ」

 と先ほどのAI同様に宣言したのだった。

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