第39話 地下都市の様子

「ここが地下都市……」

 時雨さんの後に続き康生が扉の先へと入る。

 扉の向こうへ足を入れ、まず初めに感じたことは外の世界と違い空気が重かったことだ。

 なんといえばいいか分からないが、とにかく重くどんよりとした空気が康生達を迎えたのだった。

 それから視界に写ったのは古ぼけた建物だった。建物の壁にはあちこちにひびが入っており、所々穴もあいている箇所も確認できた。観た感じ壁の素材は石のような煉瓦のようなそんなものでできていた。

 一見して建っているのが不思議なぐらいボロボロだった。

「ん?どうしたエル?早く行くぞ?」

 なんて康生が街の様子を観察している後ろではエルがじっと立ち止まっていた。


「は、はい……」

 エルは初めての人間の街に緊張している様子が伺えた。――でもエルの顔が赤くなっている事が康生は疑問に思うのだった。

「先ほどもいったが君たちは私の家で預かることになる。元々一人暮らしなので家は小さいが自由にくつろいでくれて構わないからな」

「はい、ありがとうございます」

 何から何までお世話になっている状況に康生は少しだけ焦りを覚える。このままでは以前の自分と同じ、役に立たない人間だと。

「…………」

 その後ろではエルはまだ顔を下げて歩いている。

「…………っ」

 その事に気づいた康生はそっとエルの手を取った。

 エルはすぐさま顔をあげる。

 だから康生はエルを安心させるためにっこりと微笑むとエルは再度顔を下に下げた。

 まだ緊張していのかと康生は一瞬思ったが、エルがぎゅっと手を握り返してくれたので康生は少しだけ安心した。

 そしてそんな事をしている間にも康生はゆっくりと街の中を見渡す。

 今は一本道を進んでおり道の幅が広いことから大通りのような場所だと考えられた。

 しかし道を囲む建物はどれも扉だけがある状態で店のような建物が全くなく、全て同じ形の建物だった。

 視線を上にあげると電球のようなものがたくさん吊されており、それから光が発せられ街全体を明るくしているようだった。

「街の様子が気になるか?」

「は、はい……」

 どうやら先ほどからキョロキョロし過ぎてしまったようだ。

「地下都市と言っているがここはそんな大きな所ではない。基本的には人が住める家があるだけのただの場所だよ」

「みたいですね」

 やはりこのいくつもの建物は全て家だった。

 だがここで康生が疑問を浮かべた。

「ここにいる人って何をしているんですか?」

 そう、時雨さんは家があるだけの場所といった。だったら家に住んでいる人はどんな生活をしているのか、康生は純粋に疑問に思った。

「基本的に住民は皆、工場で働いてもらっている。そして希望者がいれば兵士としての訓練を受けている」

「そうなんですか……」

 康生はその説明を聞き、少し申し訳ないが心底退屈そうに感じてしまった。

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