第37話 地下都市への入口
「着いたぞ」
時雨さんに着いていくこと約一時間。
突然立ち止まったそこは周りの景色と変わらず荒野が広がっており、とても地下都市への入り口があるようには思えなかった。
「ここが地下都市?」
エルも辺りをキョロキョロと見渡すその姿を探しているようだった。
だがいくら探しても近くにそんな物はなかった。
「――もう一度確認したい」
時雨さんがゆっくりと口を開く。
振り返ったその目はエルをじっと見据えていた。
「君は本当に味方でいいんだな?」
主語のないその言葉は、人間達に対しての味方なのか、時雨さん自身に対しての味方か分からなかった。
だがエルはじっと時雨さんを見つめ返して口を開く。
「私の目的は世界を平和にする事。それは絶対です」
一見時雨さんの問いの答えになっていないように思われたが、時雨さんにはしっかりとエルの気持ちが伝わったのかゆっくりと頷いた。
「疑ってしまって悪いな」
「いえ、しょうがないことですから」
あくまでも時雨さんは地下都市の部隊長として動き、エルはエルで異世界人だという事を再度、自覚する。
時雨さんは未だ完全に信じていないようだが、それでもここまで案内してきたという事は多少なりとは信用してくれているのだろうと康生は思った。
「それじゃあ中に入ろう。いいか?君たちはあくまでここの地下都市の子供でこっそり地下都市を抜け出したのだ。それさえ覚えていればあとの事は気にしなくてよい」
「わ、分かりました」
「はい。分かりました」
康生、エルの順で返事を返す。
「うむ、それじゃあ行こうか」
時雨さんがそう言うと、腰に指していた長刀を取り出してあろうことが地面に叩きつけた。
それは一見乱暴に叩いているように見えたが、その実、ちゃんとしたリズムとパターンで叩きつけている事に気づく。
(――なるほど暗号のようなものか)
そう理解した時にはすでに、ゴゴゴォという音と共に時雨さんの目の前の地面がゆっくりと動いていた。
「すごい……」
ゆっくりと地面がスライドし、そこから階段が現れている様子を見てエルは素直に感嘆する。
そして康生もその光景を見て、心の中をワクワクとさせていた。
「ちゃんと離れずに着いてきてよ?」
そんな康生達に気づき、再度注意するように時雨さんが言う。
「「は、はい!」」
二人同時に返事をながら康生とエルは急いで時雨さんの後へと続いていったのだった。
――言うまでもなくが康生達が階段に入ると開いていた地面が元に戻った。それが再度康生達のテンションをあげたのだった。
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