第6話 戦闘終了

「いててて…………」

 頭から落ちてしまったせいで多少頭が痛む。

 しかしその程度の事なのできっと重傷ではないだろう。

「あ、あの……。大丈夫ですか?」

「えっ?あ、あぁ!全然大丈夫だよ!」

 起きあがるとすぐ近くまで来ていた少女が心配そうに顔を覗かせていたのですぐに立ち上がる。

「それより君こそ怪我はないか?」

「私は大丈夫」

「そう。ならよかった」

 見たところ外傷は全く無いようなのでよかった。

 だがそれにより康生は気づいた。この少女の見た目がこの場にそぐわぬ格好をしていることに。

 肌は白く潤いがあり、それに合わせるように髪も白く艶やかだ。しかしそんな外見に相まって服装は派手な桃色のドレスを着ている。

(――外国人?いやそれにしては日本語をしゃべってる……。じゃあ日本人とのハーフ?でもそれにしてもその容姿は完全にアジア人のそれと全く違う。じゃあ一体……)

 などと思考を巡らせていると少女が突然その場で尻餅をつく。

「だ、大丈夫か!」

 慌てて少女の容態を見ようとするが、少女は笑顔で答える。

「本当に大丈夫だよ。ただちょっと走り疲れちゃって……」

 確かに少女の足下は少し赤く腫れているようだった。

「待ってろ今手当してやるから」

「あっ!大丈夫よ!」

 でも腫れてるじゃないか。そう返そうとした瞬間、康生は目を見開く。

「『ヒール』」

 少女は腫れている部分に手をかざし何かを唱えた。すると先ほどまで腫れていた少女の足は他の肌同様に真っ白な肌に戻っていった。

「ど、どうして……」

「ごめん!私実は異世界人なの!」

 少女は突然頭を下げる。

 そこでようやく康生は思い出す。

 ――そういえばこの世界は一体どうなったのだと。

『丁度いい機会ですご主人様。この娘に事情を説明してもらったらいいじゃないですか?』

「あぁ、そうだな」

「え?なんです?」

「え?あぁそうだった」

 AIが自分にしか聞こえないことをすっかり忘れていた康生は思わず普通に受け答えをしてしまった。

 初めて少女の前に姿を現した際もこれのせいで冷たい視線を向けられていたことも同時に思い出す。

「あ、え〜と実はこのスマホの中にAIが入っていたそれと会話していたんだ」

 とりあえず耳に付けていたイヤホンを外し、スマホを取り出す。

『初めてまして。私AIのマリンと申します』

「うわっ!」

 AIが挨拶をすると、少女がいきなり仰け反り返る。

「は、箱に人が入ってる……!」

 少女は物珍しそうにスマホに移っているマリンの姿を見る。

 そんな少女の反応を見て康生は気づく。

 もしかしてこの少女はスマホを知らないのではないかと。さらにはこの世界には機械が消えてなくなってしまったのではないかと。

『私は電気で動いているのですが、もしかして電気をご存じないですか?』

 そんな中AIは一人黙々と情報収集に取り掛かっている。

「で、電気?私はこちらの世界の文化に疎いからそんな物は知らないぞ」

 少女はすぐに首を振る。

(――こちらの世界か。どうやらさっきの異世界人というワードから察するにこの少女はこの世界とは違う世界から来たのだろう)

「ねぇ君。もしよかった俺たちにこの世界で起こったことについて教えてもらっていいかな?」

「この世界で起こったこと?」

『はい。残念ながら今の私達には十年間ほど世界の知識がないものでして……』

「よ、よく分からないけど分かった……」

 不思議そうに頭を傾げるが少女はゆっくりとこの世界で起こったことについて語りだした。


 そう、それは遡ること五年前の出来事であった。

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