滅亡変革~平和ルートを探すため~
留野洸希
プロローグ?
「これで終わりだ!」
トラの皮を基調としている服を着ている丸顔の青年が叫んだ。
剣を振り下ろせば、この世界ミーングを支配しようとした魔王を倒せるはずだった。
そのはずなのに、後ろから剣が彼自身の胸元に刺さった。
後ろを振り向こうとしたが、剣が取り除かれ力なくその場所に倒れた。
青年は『魔力探知』で誰がいるのか確認してみると、仲間である淑女の二人であった。
「ど、どうして……?」
それが青年が言った何回目の最期の言葉であった。
□■□
意識がなくなった瞬間、どうしてか彼は最初からやり直したいと心の中から願った。
すると、何もない空間の中で意識だけが戻った。
「アレオ。君なら現在(いま)を取る? それとも、過去を取る?」
青年ことアレオは、意識がないのにこの言葉には聞き覚えがあると思ってしまった。
何故か、聞いたことがないのに聞いたことがある声。
その声に答えようとしても声が出なかった。
――なんでだよ?
どうして裏切られたんだよ?
心の中で訴えかける。
短いようで長かった人生。
アレオは十歳まで魔族の存在を知らずに平和に暮らしていた。
突然、封印から解放された魔族が彼の住んでいる彼の住んでいる街に攻めてきた。
結果、その時に母親が殺された。
約一年後、父親も殺された。
一年後、アレオは自身に対しての無力さや憤りを感じていた。
それを改善してくれたのは仲間たちであった。
二人と暮らしていると、アレオは自然に笑顔が出ていた。
大切な仲間であったと思ったのに――。
――裏切られた。
状況が追い付かずアレオは混乱した。
刹那、背中に羽根がある一人の中年男性が目の前に現れた。
純白のトーガらしきものを着ていて、頭には純白のシルクハットと手にはステッキを持っている紳士のよう。
左の腰には大きな両手剣が入れてある鞘、背中には上半身を覆うほどの大きな盾がある。
その面影はどこかでアレオは見たことある。
動こうとしても動けないでいると、神?が問いかけてきた。
「やぁ、アレオ。突然だけど、君に一つ問いたい。現在(いま)を取る? それとも、過去を取る?」
アレオは首を傾げた。
どこかで見たことがあるシルエット、聞いたことがあるのに名前が出てこないからだ。
それに、言葉の意味を考えてしまった。
アレオが悩んでいると、神?は指を鳴らした。
瞬間、景色が見えるようになった。
雲一つない青空、逆に反対は水上にいるかのように、神?と青年の姿があらわになっている。
左右対称に見たら、どこまでも地平線が続いているように見える。
神?はアレオの状態を見て気遣いをしてくれた。
「ゴメンね、アレオ。今の状況を説明するにも、時間がないからさっきの質問に答えたくれる?」
「神様、それは先程の言葉はどういう意味ですか?」
少し考えてから神?は答えた。
「一つ言っておくが、神は世界を維持するだけの力を世界に残して違う世界に行ってしまったよ。私は君たちを導く天使……みたいなものかな? 君たちの世界では英雄フーゴと言われている」
フーゴという名前を聞いて慌てふためくアレオ。
遥昔、人間、亜人族、精霊族、魔族が存在した。
その四種族が戦争をしていたが、その争いを突然現れたフーゴがひとりで止めたと言われている。
伝説の英雄が目の前にいる。
それだけでアレオは胸が高まってきた。
「あ、あなたに憧れてぼ、ボクは今まで頑張ってきました。あなたの伝説は聞いています」
「うん。知っているよ。それより、時間がないからさっきの質問に答えてくれる?」
顔一つ動かさないフーゴ。
聞きたいことは山ほどあったが、最初に聞いておきたいことがあった。
「答える前に質問をしてもいいですか?」
「手短にね」
「ボクは死んだのですか?」
アレオは覚悟を決めて聞いた。
考える素ぶりもみせず、フーゴは頷いた。
アレオはフーゴから視線を逸らす。
――仲間だと信じていたのに……。
アレオは首を横に振って視線を戻す。
そんなアレオの心を読んだのか、フーゴは質問してきた。
「それでアレオ。君はどちらを選ぶ?」
「……もちろん! 現在(いま)を取ります。だってフーゴさんの他の武勇伝も聞きたいからです」
眉を少しだけ動かしたフーゴは質問を変えてきた。
「だったら、質問を変えさせていただくよ。君の仲間が裏切った理由を知りたくないかい? あの二人にもかなり事情はあったんだよ」
「また裏切られるのが関の山でしょう?」
一呼吸おいてフーゴは頭を下げた。
「本当に申し訳ないが、アレオ。もう一度過去に戻って世界に戻ってくれないか?」
突然、英雄からの頼みに動揺するアレオ。
だが、すぐに少しだけ冷静になって彼は首を振った。
「どうして過去に戻って世界を救ってほしいのです? ボクより相応しい人はもっといると思いますよ」
「君じゃないとダメだ!」
フーゴの叫び声に驚きアレオはビクッと震わす。
さらにフーゴは土下座をしてもう一度頼んだ。
「お願いだ! 過去に戻って一からこの世界を救ってほしい! 私は命を救ってくれた神ゴウの判断が正しいと証明してほしい! そうすれば、他の神たちが戻ってくれるかもしれない。だから!」
一呼吸おいアレオは再び首を振る。
落胆している憧れの人を見るのは心を痛むが、彼はフーゴの肩を掴んだ。
「もうボクは役目を終えたのでしょう? だから、ここにいるのでしょう?」
「違う! まだ君の役目は終わっていない! このまま時を進めたら世界が滅亡してしまう」
「な、なにを言っているのです? 実際に魔王は倒せていないけど、いつか誰かが――」
フーゴは大きく首を振ってアレオの肩を掴み返してきた。
「本当の敵は魔王じゃない! 早く――。ハッ、不味い、アイツが来る! もう一度、過去を選んでくれ!」
意味が解らず、アレオは考える。
何に怯えているのか分からないので訊こうとした。
その時、空間に亀裂が入った。
「さぁ、アレオ。過去を選ぶと言ってくれ! そうすれば、君の両親も救うことになる」
「それはどういう意味ですか?」
「それと、最後から最初までやり直せるのはこれで最後だ。さぁ、過去を選んでくれ」
「――過去を選びます」
選びなおすと、景色が一気に変わり始める。
その時――。
「フォフォフォ! これで英雄は消えた。後はアレオ! 貴様だけだ!」
怖くなりアレオは身をしゃがめて耳を塞いだ。
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