いいからここは俺に任せてお前は先へ行け!!

ちびまるフォイ

この場はお前にまかせよう

「くっ、なんて数の敵だ……!!」


「なにやってる! あいつを助けにいくんだろ!?

 こんなところでモタついていていいのかよ!」


「し、しかし……」


「ここは俺にまかせて先にいけ。

 なに、すぐに追いつくさ」


男は友の申し出とその意味を理解してぐっと涙をこらえた。


「かならず……かならず追いつくんだぞ!!」


「……当然だ。俺を誰だと思ってる」


男は振り向かずに走り出した。

その先で待つ人を助け出すために……!


「さぁて、この数をどう相手してやろうかねぇ」


前の前には血に植えたモンスターたちがこちらを睨んでいる。


「愚痴ってもしょうがねぇか。さぁ、かかってこい!!!」


剣を振り上げた時、さっきダッシュした男がUターンして戻ってきた。


「おい! なに戻ってきてるんだ! ここは俺にまかせろと言っただろ!

 まさか……俺のことを心配して!?」


「ちがう!! あっちに行った先のほうが強いモンスターがいたんだ!!」


男はダラダラと冷や汗を流している。


「なんか、先に進んだらさ、めっちゃでかい龍いんの。

 いやさすがにあれには勝てねぇわって即わかったよね。

 それならこっちのザコ集団相手にするほうがいいよね。うん」


「バカやろう! 囚われているお前の妹はどうなるんだ!」


「だったらここは俺に任せて先に行ってくれ!!」

「いやちょっと待て! それは俺も無理だ!」

「なんでだ!」

「勝てねぇよ!!」


二人はお互いをじっと確かめた。


「まあ……そうか。俺らって実力はだいたい一緒だしな」


「だからライバルとしてこれまでポジションはってたんだろ。

 なに最大の見せ場をお前のせいで台無しにしてくれてんだよ」


「俺がドラゴンに殺されたら誰も救えないだろ!?」


「なるほど! たしかに!!」


お互いに実力が拮抗しているのは知能にも当てはまった。


「というか、お前の妹をライバルが助けるってシチュエーションはどうなのよ。

 やっぱりここは俺に任せて、お前が先にいけよ」


「人の命を救うのにシチュエーションもなにもあるか!!

 いいからここは俺に任せて、お前こそ先にいけよ!」


「お前のほうが炎の耐性あるだろ!?」

「回復魔法はお前が覚えてるじゃん!!」


どちらがここを任されるべきかの口喧嘩がはじまった。


「いやちょっと待て。ものすごいこと思いついた」


「え?」


「というかさ、結果的には助け出せればいいわけじゃん」

「うん」


「いっそ、ここは二人でなんとかして、その後で助け出しに行こうよ」


「一刻を争うんじゃなかったのか」


「急がば回れって言葉もあるだろう!?

 急いで助け出すことよりも、時間はかかるが確実な方がいい!!

 あのドラゴンだって俺たち二人ならなんとかできる!!」


「なるほど……やはり天才か」

「だろ」


「そもそもたどり着けなかったら意味ないしな」

「そうそう」


二人はお互いに自分を納得させるだけの理由を反芻してから武器を構える。


「それじゃ、まずはこいつらを片付けるとしますか!!」


「ああ、二人ならきっとできる! 一人ならきつかったが、二人なら楽勝だ!!」


「そして、こいつらを倒したら妹を確実に助けるために

 いったん町に戻ってしっかり回復してからもう一度入り直して行こう!!」


「ああ! 一刻を争うから確実にな!!」


「「 さあ、かかってこい!!! 」」


二人は後で回復することを前提にすべてを使い切る気満々の臨戦態勢。

早すぎる最終決戦がいまはじまる――!!!



それを見て、敵はすぐに行動した。


「よし、ここはお前だけに任せた!!」

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