第9話 蛾と煙草

クーラーは効かなかった。僕はシャツの襟ぐりをはためかせて胸に風を送った。壁に凭れて煙草を咥えると、天井辺りに一匹の蛾が飛んでいるのが見えた。僕はうんざりして煙を吐いた。煙は蛾の飛んでいる下の辺りで縺れて消えた。僕は重い腰を上げて窓を開けた。蛾は僕の方を見もせずに外へ出ていった。

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