3

 その日は月が赤く光っていました。

 

 今日は町外れにある少年の家を訪れました。

 そして、いつもそうするように影を少年に授けました。

 それから一週間後の夜、再び少年の家へ訪れました。


 苦しんでいるのかと思いました。

 泣いているのかと思いました。

 どうしようもない空しさで、心ごと、体ごと、影に奪われているのかと思いました。

 

 どれも違いました。

 少年はとても穏やかな顔をしていました。

 しかし、少年の影は確かにあります。


 「ありがとう」


 悪魔は驚きました。

 でもそう言ったのです。

 心臓のあたりがぎゅっとあたたかくなりました。

 まるで大きな生き物が自分の中で呼吸をしているようでした。

 何をどう返したらいいか分からず、その場を立ち去りました。

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