第8話 炸裂! 新たな力
ミランダとイザベラさんの対決は一層激しさを増していた。
ミランダは
まだ2人ともそれほど多くの手の内を見せていないにも関わらず、戦闘は
それを示す様にミランダのライフは残り60%近くまで減り、イザベラさんのライフも残り70%を切っている。
だけど戦闘が中盤に差し掛かると、イザベラさんがミランダを押し込む場面が増えてきた。
ミランダは防御にシフトして何とかこれを乗り切っていたけれど、そんなミランダに猛攻撃をかけるイザベラさんの顔は興奮と
それも仕方ない。
あれだけの猛攻を受けるだけで体力が消耗してしまう。
ミランダのライフはいよいよ半分近くまで減ってしまっていた。
一息つくように後方に素早く離れて間を取ったイザベラさんを深追いすることなく、ミランダは小休止して呼吸を整える。
イザベラさんは両手を広げてミランダを
「すばらしい。さすがミランダ。こんなにも本気で戦ったのは初めてですわ。そしてあなたはまだまだ戦える。その強さには感動を覚えます」
「チッ。いちいちうるさい女ね。まだまだ足りないっつうの。もっと全身全霊でかかってきなさい」
「ええ。そうさせてもらいましょう」
そう言うとイザベラさんは
「
イザベラさんの体を包み込んでいた光が次々と空中に散布され、それが人の形を成していく。
あ、あの技は……
光は十数体の小さな天使たちに変わっていく。
彼らはイザベラさんの周囲を遊ぶように飛び回り、ミランダに
彼らの小さな口が光を帯び始めた。
く、来るぞ。
「さあ。これをどう回避しますか? ミランダ」
そう言って涼やかに微笑むと、イザベラさんはミランダに小天使たちをけしかけた。
小天使たちは次々とミランダに襲いかかり、口から光線を浴びせかける。
超高速の光線は撃たれてからの回避はほぼ不可能だけど、ミランダは冷静に射線を先読みしながらこれをかわしていく。
それでも小天使たちはさまざまな角度からミランダに攻撃を仕掛ける。
非常に危険な状況だ。
光線はミランダの体のほぼスレスレを通っていく。
少しでも体の位置がずれたら、腕や足を撃ち抜かれてしまうだろう。
彼女は
見切っているのか?
もしかしてギリギリのところで光線を避けられるよう位置取りしているのかもしれない。
せわしなく宙を飛び回りミランダを
そんなミランダの様子を
「……なるほど。私のクセを見抜いたのですか。やりますわね。たった一度の対戦でそこまで見抜かれるとは」
クセ?
イザベラさんの言葉に僕は思い出した。
イザベラさんは小天使を駆使する際、あまり動かなくなり、小天使たちの動きを目で追うようになる。
それは彼女が小天使たちを全て同時に自分の意思で操っているからだった。
その攻撃のクセを見抜いているから、ミランダはあんなギリギリで光線を回避できたのか。
「ですが、それならばこれはどうです?」
イザベラさんがそう言うと小天使たちの動きに変化が生まれた。
それまでは連携して動いていた小天使たちが、まるで
それはまったく不規則な動きで、しかも口から光線を放つかと思われた小天使が放つのをやめたり、かと思えばイザベラさんの背後から顔を出した小天使がいきなり光線を放ったりと多彩かつ無秩序だった。
そしてイザベラさんは先ほどまでのように小天使らの動きを目で追っていない。
もしかして彼女は小天使らの制御を放棄し、彼ら自身に任せたのかもしれない。
「チッ!」
それまでギリギリのところで避けてきた光線が、ミランダの黒衣や髪の毛を
あ、危ない。
好き勝手に動く小天使たちの動向を先読みしきれず、ミランダは
彼女はすぐに魔力で空中に上昇し、高速で吹き抜けの中を旋回する。
そんな彼女に向けて小天使たちが次々と光線を放った。
だけどミランダの飛行速度が上がり、それらは当たらない。
さらにミランダは飛びながら連続で
「ハァァァァァッ!」
黒く燃え盛る火球が爆音を響かせて床を次々と焼く。
気合いの入ったその猛攻撃を受けて、小天使が2人ほど犠牲になった。
もちろんイザベラさんはすぐに小天使を補充召喚して、ミランダへの攻撃を続ける。
「この限られた空間の中ではそう逃げ切れるものではありませんよ」
次々と放たれる小天使らの光線が吹き抜けの中をくまなく突き抜け、これを避け切れずにひとすじの光線がミランダの足を
ミランダは苦痛に顔を
「くうっ!」
「ミランダ!」
それでもミランダは
鳴り止まない
ミランダはいつも以上に激しく
彼女の魔力は底無しだから、そう簡単に尽きることはないけれど、その勢いは激し過ぎる。
僕が思わず心配になったその時、地上近くにいた小天使が次々と
ミランダの乱れ撃ちが攻を奏したのかと思ったけれど、そうじゃなかったんだ。
ミランダは頭上から
そこで僕は初めて気付いた。
「あ、あれは……」
いつの間にか2階回廊の
な、何だ?
僕は目を
それは小さな子供のような姿だけど、ミランダと同じ黒衣に身を包み、黒くて短い杖を持ったまま
そしてその子供は1人だけじゃなかった。
次々と同じような子供が一定間隔を置いて
全部で30人近くはいる。
その姿に僕は思わず息を飲んだ。
「ミ、ミランダだ……」
そう。
その小さな子供たちは、顔も髪の毛も目の色も全てミランダと同じ特徴を備えていた。
まるでミランダが幼くなった姿そのものだ。
僕は頭上を見上げる。
そこには
「
あれは魔法なんだろうか。
じゃああの小さなミランダたちは魔力で実体化されたってことか。
前にミランダは言っていた。
今回、いつもの
これがそうなんだ。
イザベラさんの使う
だからミランダは
あの場で使うのは芸がないとか言って。
それにしてもミランダの作りだした
イザベラさんの小天使たちの2倍近くはいるんじゃないだろうか。
「……
イザベラさんは厳しい顔つきでミランダを見上げてそう言った。
そうか。
ミランダがあんなにしゃにむになって
僕の心配は
ミランダは至って冷静だ。
「二番煎じとは恐れ入りました。ミランダ」
そう言ってミランダを挑発するイザベラさんだけど、ミランダはこれを鼻で笑う。
「フン。言っておくけど私の
ミランダがそう言うと小さな魔女たちは
彼女らのそれは本家ミランダのものと比較しても
またたく間に広場は火球が飛び交い、小天使たちは反撃もままならないまま次々と炎の
イサベラさん自身も無数に降りかかる火球を
爆風と高温の
そこで僕は気が付いた。
先ほどまで頭上の空中に陣取っていたミランダの姿がいつの間にか消えていることに。
ど、どこに……ハッ!
火球が雨あられと降り注ぐ中央広場の床の上、イザベラさんの背後にミランダは立っていたんだ。
それに気付いたイザベラさんが振り返ると同時に、ミランダの指から本家本元の
「くっ!」
イザベラさんは
「
ミランダの声と共に
「し、しまっ……」
身動きが取れなくなったイザベラさんの背中に
すでに小天使たちは
「きゃあっ!」
そして……イザベラさんの真正面にいるミランダの指に黒い炎が宿った。
「こいつで仕上げよっ!」
ミランダの
「くはっ……」
イザベラさんのライフがついに尽きた。
ゲームオーバーだ!
イザベラさんはガックリとその場に
そして彼女の頭上に3つ連なる光の輪のうち、1番上の輪から光が消えた。
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