第101話 かなり凄いのでは?
アヤノの身に起こった幸か不幸か、若化の呪いに頭を悩ましながら、馬車に揺られる。
断層都市アーケストレスにて生まれ変わった馬車の調子はよく、その安定性は、馬車のなかで書き物をしてもほとんど苦に感じないくらいに揺れないほどだ。
あれからもう1週間経つが、いまだにアヤノは小さいまま。
「アヤノさん、何かおかしなことはありませんか?」
レティスにホワイトプリムを取られ、からかわれるアヤノに話しかける。
肉体の大きさ的に、レティスより2歳くらい小さいので、いまとなっては彼女はレティスのおもちゃだ。
「返してくださいっ! って、え? おかしなことですか?」
「まったくー、アヤノは元気なんだからー、レティスお姉ちゃんがこちょこちょしてあげないと不機嫌になっちゃうんだよねぇー!」
「っ、あははは! やめてくだしゃ、さいっ! あはははは、ははははは!」
眼福、合掌。
ロリとより小さいロリをいじめて楽しんでいる。
え、ここは天国ですか。
俺は死んだんですか。
可愛いと可愛いの暴力に、俺も混ざりたいが、それをしてしまっては台無しだ。
意志の力をもって、自らの顔を殴って、おのれを律する。
「ぐぼへぇ」
「ぇ、サリィ……ッ! 大丈夫!?」
「……えぇ、ただいま天国より帰還しました」
ジリジリ痛む頬をおさえ、俺は手元のノートに持ちあげる。
「記録つけてますけど、見たところ体に異常はないですね。ただ、小さくなった……若返っただけです」
「うーん、だとしたら存外に凄いことなのでは?」
「ッ、だよねー! アヤノはわかってんじゃん、レティスはお母さんの目指してる不老不死を完成させちゃったんだー!」
やや飛躍した考えだが、言っていることは間違えていない。
そう、若返りができると言うことは、それすなわち不老ということになる。
当然、老いなければ人に寿命はないので、外的要因さえ働かなければ、不老の人間は不死であるのだ。
そう、実はこれかなり凄いことなのである。
「でも、霊薬の配合率がわかりませんからね、まだ不老不死の秘薬完成とは言えません。……けど、お風呂に投入した霊薬の種類は判明してるので、時間をかければ、たどり着けるかもしれません」
「ふふーん! それじゃ、ローレシアに帰るまでに、わたしは不老不死の秘薬を完成させてみせるわー! さぁ、サリィ、わたしが何の霊薬をお湯に入れてしまったのか、教えなさいー!」
やや人任せが過ぎるが、可愛いのでオーケーだ。
それに、この研究は、馬車のなかでの暇つぶしにもなってくれるだろうから、一石二鳥の効果を持っている。
まぁ、さすがに、まだレティスにはそんな大それた秘薬は作れないだろうが、陰ながら支えてあげよう。
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