第95話 お祝いパーティ
ポパイの開発した解毒霊薬の効果は抜群だった。
レティスはすっかり快復した。
「お嬢様、おめでとうございます!」
「「「おめでとうございます」」」
「ふふっ! わたしは毒なんて効かないのよー! さぁ、エゴス、そこのローストラビッテをこの皿に乗せてー!」
レティスはフォークとスプーンで机を叩き、ご馳走が皿に盛られるのをご機嫌に見守る。
エゴスとメイド長の率いる使用人たちによる、お祝いのパーティが開かれることになったのは、ついさっきだ。
というのも、流石に毒に娘が倒れたことを心配になったのか、プラクティカが屋敷に帰ってきたからである。
「では、奥様、
「まったく、エゴスは相変わらず腰が低いのね。もっとシャキッとしないとパールトン家の代理管理者失格よね」
「っ、ははーっ!」
もはや女王様となにも変わらない、まわりの対応に、改めてプラクティカという人物が、大きな権力と威光を持っているのだと再確認させられる。
年に数回しか会わないのに、ちゃんと皆の心を掌握しているのだ。これがカリスマという奴だろうか。
「英雄ちゃん、ちょっといいかなぁ」
「ん、変態錬金術師のポパイか、どうした、そんな旨そうにチキン頬張って」
「あぁ、本当に美味しいよ。僕まで参加させてくれてありがとうと、あそこの校長先生に伝えておいてくれよぉお〜」
ポパイは骨をしゃぶるように綺麗な食べ終えると、指をペロリと舐めた。
「ひとつだけ、立ち去るまえに伝えておこうと思ってねぇ……僕がさっき解毒した毒さ、実は毒じゃないんだよねぇえ〜」
「なに……?」
「この国の錬金術師、だーれも解毒霊薬を作れなかったのはそのせいだぁ。あれはどちらかと魔力そのもの。体内に侵入し、対象の魔力に作用する『意思ある魔力』といったところだろうねぇえ〜」
「意思ある魔力……どうしてそんなものが?」
「さぁ? それは僕にもわからなぁい」
ポパイは肩をすくめ、近くの皿からチキンを手にとり、ひらひら手を振って立ち去っていった。
「サリィ、久しぶりね。元気にしているかしら?」
モヒカンの後ろ姿を見送っていると、少女の声が聞こえた。
横を見れば、青髪をおさげにして、いかにも若そうに振る舞うプラクティカの姿があった。
実際はそれなりの年齢なので、なんでか若い見た目に騙されてはいけない。
「プラクティカ様、久しぶりです」
「やだ、そんなかしこまちゃって。最近のレティスはどうかしら?」
「とても熱心に勉強していますよ、魔術も錬金術も。最初にポーションの授業をして以来、すっかり霊薬の調合にハマっているので、将来は魔術師より錬金術師にちかくなるのかなーとか思ってます」
「ふふ、まぁ、あの子の未来は、あの子が選べばいい。私は魔術師に育ててってお願いしたけど、もう忘れてくれていいわ。やりたいようにやらせてあげてね」
「えぇ、そうします。……あぁ、そうだ、プラクティカ様、ヨルプウィスト人間国の件、ありがとうございました。これで気兼ねなく自分の方の用事も済ませられます」
「……ふふ、いいのよ、私のため、そしてあの子のだからね。それに、サリィにはいつもお世話になってるしね。レティス自身も行きたいって言ってるんだから、席を用意しないわけにはいかないわ」
プラクティカと共に、遠目にレティスを見つめながら俺たちは薄く笑いあった。
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