真33話 アルテミスの狙い

 「モグは一体何を……」


 「どちらにせよ、これで彼を見つける動機が出来たからラッキーと思うべきかな」


 「確かにそうね。アルテミスを見つけてモグの事を聞かないと! よし!」


 「行くのか? ならあたしも行こう。何より、魔術具のことが気になる」


 「わかった。なら一緒に……って、アルテミスはどこで見つかったの?」


 私がヴィアに聞く。が、ブルブルと顔を振る。つまり、


 「なんだよ、てめえら! 場所を聞くの忘れていたのかよ! はぁ……全く」


 するとミネルバが白衣のポケットからまた新たに指輪を取り出した。今度はグレーの指輪だった。


 「《展開》!」


 


 パアアアアアア……!


 


 はめた指輪からビームが出ると、テーブルの前に置いていたテーブルに当たる。するとテーブルに広がり、ビームで作られた地図が出来上がる。


「この魔術具には地図やグラフなんかをこんな風にビームで作り出すことが出来るものだ。これでここをこうして……あとこれも……これか?」


 ミネルバが地図を指さした先には赤く点滅する丸い光が見える。私が「これは?」と言うと、彼女が答える。


 「恐らくこの赤いのがアルテミスだ」


 「え!? どうやったの?」


 「まず今ここにいるあたしら以外のスキル所持者をあぶりだして、その中で一際強力なやつを残す。まぁ言ってしまえば各国の王達だ。さらにその中でそれぞれの国にいない人物を出すと……こうなるって訳よ」


 「つまり外部の強いスキル所持者がこの赤いやつってこと?」


 「ああ、だが何故奴はこんなところに……」


 「ここってもしかして……!」


 「ッ! あちゃ~。まずいねこりゃ」


 「ん? 何でアポロンにこれがあるのがまずいんだ?」


 私とヴィアが声を揃えてミネルバに言った。


 「アーサ王とミーヤ嬢が絶賛観光中だから!」


 「アーサ王とミーヤちゃんが観光中だから!」


 


       ◇


 


 ──────シュン!


 


 「到着! さてどこに……」


 「あ! あそこ!」


 私が遠くに見えた二人の姿を捉える。急いで向かい、二人に声を掛ける。


 「アーサ王! ミーヤちゃん!」


 その刹那──────


 


 ダ―ン! ダ―ン!


 


 「ッ! ゴホァ……」


 


 『きゃあああああ!』


 『うわあああああ!』


 周りにいた住民が一斉に叫び、辺りは騒然とする。銃弾を受けたアーサ王がその場に崩れる。地面に倒れるギリギリで私が到着し身体を支えると、傷口を診る。当たったのは心臓ではなく肩にあった様で、今すぐに死ぬことはないと判断した私は、


 「ヴィア! 二人をお願い!」


 「もちろん! そっちは頼む! あの建物の陰に隠れた!」


 「わかった、行こう、ミネルバ!」


 「ああ!」


 私とミネルバが犯人を追う。すると角を曲がったところで犯人を見失ってしまう。


 「ちっ! どこに行った?」


 「一旦戻りましょう」


 「仕方ない」


 


 


 私達が戻ると、応急処置を終えたアーサ王が噴水を囲う腰掛けに座っていた。見た感じ、何とか無事な様だ。


 「アーサ王!」


 「久方ぶりだな、アーサ王」


 「ミネルバ王、久しいな。すまない、こんな情けない姿で……くっ!」


 「お父様!」


 「無理するなアーサ王。それより、ここじゃまたいつ襲われるかわからん。一旦、アポロンのところへ行くぞ」


 


 


 ────アポロンの城。


 「────……ん、みんな無事でよかった。アポロンも安心」


 出迎えたアポロンがアーサ王を救護室へ。ミーヤちゃんとヴィアもいっしょに。残った私とミネルバ、アポロン、そしてたまたま来ていたネプチューンが応接間で事件の事を話した。


 「──────なるほどな。それは災難だったな、お二人さん」


 「あー! しゃらくせぇ! おいネプチューン、何か知らねえか? なんでもいいからよぉ!」


 「何でもっつってもな……あ、でも一つだけ分かるぜ」


 「本当か! 言え! 早く!」


 ミネルバが食い入るようにネプチューンに顔を近づけた。そして今、胸倉を掴んだ。


 「ちょ、手ぇ放せ! 話してやるから!」


 ミネルバがパッと手を離すと、ネプチューンが「死ぬかと思った……」と安堵する。代わりに私が聞いた。


 「それで何がわかったの?」


 「……ヴィヴィアンが言った分身ってやつ、俺も持っているからだよ」


 「え!? どこに?」


 「お前さんは一回見たかもな。マリンの野郎が俺を起こした後、俺の国で少し」


 「あー! 石のこと!?」


 「石ってお前さん……せめて祠って言わんか……」


 「ああ祠か……当の昔に壊しちまったな」


 と、ミネルバ。


 「アポロンは見たこと無い」


 と、アポロンが。


 「じゃあ、ちゃんと使っているのはネプチューンだけ?」


 「な……なんだよお前ら……ったく」


 「それでその祠が分身ってどういうこと?」


 しびれを切らし、私が攻め立てる様にネプチューンに聞く。


 「だから近いって! ……その祠に俺達は何かあった際に予め器として力を置いて置けるんだよ。つまりこの件の場合、アルテミスの野郎は祠に力を隠していたんだよ。そしてゼウスに殺されたと同時に復活できるように仕掛けておいたと言う訳だ」


 「なるほど……でもそれならモグがすぐに気づくんじゃ──」


 「あほか! そうならんためにマリンが消えてから復活したんじゃろがい!」


 「あはは……」


 正にネプチューンの言う通りだ。それでも疑問は残る。


 「う~ん……じゃあ何でアルテミスはこのタイミングで現れてかつ、アーサ王を狙ったんだろう……ミーヤちゃんにはもう力はないし──」


 「他に狙いがあったとかじゃないのか?」


 「他っていったい何が……ッ!」


 いや、ある。とっておきの物が。しかももしそれが、アーサ王の元にあると勘違いしたまま彼を襲ったのであれば納得できる。何よりそれはアルテミスにとってとても重要なものだから。私は立ち上がると、首に下げたペンダントを取り出し言った。


 


 「──────彼の狙いはこれよ! そしてこの本はこの魔術具を使うためにあるのよ! ──」


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