お墓参り 混浴2
「ふぅ……康貴も岩にもたれてるのよね? 多分」
「そうだな」
「私もちょっと、そうしてみたくて」
「そうか」
お互いに岩を隔てて座る。
しばらくまた無言になったが、なんとなく近くに気配を感じるおかげか、さっきまでのような気まずさはなかった。
落ち着いてきた頃に、愛沙がこんなことを口に出す。
「ねえ。一緒にこっちに来たのっていつぶりかしら」
「んー……」
記憶を掘り起こすが、それでも思い出せないほどに前だったと思う。
ばあちゃんの家に来る機会はあっても、愛沙たちとの接点はもうほとんどなくなっていたからな……。
「私もあんまり思い出せないけど、前も一緒に来たのかしら」
「どうだろうな……」
「まあ昔なら、一緒にお風呂も入ってたもんね」
「そんなこともあったな……」
「また一緒に入るなんて思わなかったわ」
そりゃそうだろう……。
「康貴、ありがとね」
「突然どうした」
「えっと……いつものお礼? 私は多分、こういう時じゃないと素直になれないから……」
プールのときを思い出す。
こういうときというのはそういうことかもしれなかった。
「こちらこそありがとう」
「えっ⁉ なんで康貴が……?」
本気で驚いてることにびっくりする。
「俺は愛沙といて楽しいから、そのお礼」
「……そっか」
それだけ、お互いよくわからないがお礼を言い合って、それっきり言葉もないまま岩にもたれかかる。多分愛沙も同じだろう。
「ちょっとのぼせちゃったかも」
「ああ……上がったほうが良い」
「康貴は?」
「俺はもうちょっと……いや上がったほうが良いかもな……」
先に入ったのは俺だし。
「わかった。じゃあ岩を時計回りに回って入れ替わりましょ」
「ああ……愛沙は大丈夫か? それにまなみは……」
「あー……」
どうしたものかと思ったところでちょうどよくまなみの声が聞こえてきた。
「あっ! なんか楽しそうなことしてる!」
バシャバシャと駆け寄ってくるまなみ。
「ストップ! それ以上はまた同じことになるでしょ!」
「はーい」
今回は愛沙が止めてくれたらしい。
「康貴が先に上がるからこうやって入れ替わろうって話をしてたの」
「追いかけっ子⁉」
「追いついたら意味ないでしょ!」
そんないつもどおりのやり取りをしながら無事、事故なく風呂を出ることに成功する。
「あれ……?」
愛沙とまなみの様子をみて、いつもどおりと思うなんて、それこそいつぶりだろうか。
「結構一緒にいるんだな……俺たち」
考えてみれば夏休みに入ってほとんど一緒にいるようなものか。
「そうか……」
だからといってどうということはないんだが、なぜかそのことが嬉しいような、不思議な気持ちになりながら二人を待つことになった。
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