女子会に巻き込まれて1
「康貴……その……ごめん……」
「突然どうした」
家庭教師のあと、いつもなら来ない見送りに来たかと思えば、愛沙がなぜかとても申し訳なさそうに俺に言う。
「どうしても断りきれなくて……その……みんなで出かけるとき、康貴も来てほしくて……」
「みんな……?」
「うん。えっと……梨香子と美恵と藍子と……」
「いつものメンバーか」
「うん」
うつむいて申し訳無さそうにする愛沙を見て不思議に思う。
別にそんなに気にすることだろうか? と。
だが間違っていたのは俺のほうだった。
「どうせ隼人たちも来るんだろ?」
「んーん。その日はその……女子会、だから」
「なんで……?」
何故か俺は女子会に参加することになってしまったようだった。
◇
「お、来たねー! 康貴くん!」
「秋津……俺はなんで呼ばれたんだ……」
「そーんなの決まってんじゃーん。女の子の買い物に付き合うんだから、荷物持ちです!」
「ごめんねぇ、藤野くん、無理言っちゃって」
「東野……。いやそれはもう良いんだけど……」
俺が気にする素振りを見せればその瞬間愛沙の表情が曇る。
だから俺は努めて気にしない素振りを続けていた。
「ま、なんだかんだこんなハーレムで出かけられることなんてないんだしさっ! 役得役得!」
「いやいや……」
秋津がそう言いながらぱしぱし腕を叩くのでとりあえず距離を取っておいた。
「まあ、よろしく」
「加納、よろしくな」
そんなこんなで、何故か場違いな俺を交えたまま、女子会とやらが始まってしまった。
愛沙はやはり、終始申し訳なさそうにしていた。
「今日はたっくさん買うぞー!」
「私も梨香子に選んでもらおうかな」
「おー、藍子くらい美人だと選びがいがあるなぁ」
「ちょっと、変な手つきで近づかないで」
おっさんみたいなことをしている秋津とそれに付き合う東野。
加納はマイペースに一人で歩くので、結果的に俺は愛沙の横を歩くことになる。
まあクラスメイトとはいえこれまでほとんど交流のなかったメンバー、ましてや女子だ。
こうして付き合いの長い愛沙が横にいてくれるのはありがたかった。
「ごめんね?」
「もう来たんだから気にしないでくれ。それより俺がいたせいで楽しめなかったってなるほうがいやだからさ」
「そっか……そうだよね。うん…………よしっ! 切り替えた!」
ペチペチと軽く頬を叩くと愛沙がそう言って表情を明るくする。
空元気という感じがすごいがまあ、そうやっているうちに楽しめるようになってくれればいい。
「ほらほらー! お二人さんもはやくー!」
「ごめんごめんー!」
いつの間にか距離が開いていた秋津たちに呼ばれる。
「ほら康貴、行こ?」
自然な感じで愛沙は手を出し、俺を引っ張ってみんなのもとに走っていった。
「お、おい愛沙」
「せっかくなら康貴にも服、選んでもらおうかしら」
少し前のデートを思い出させるようなことを言いながら、愛沙は楽しそうに笑っていた。
切り替えてくれたのだけは良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます