女子会に巻き込まれて2
「にしても、あんな自然に手つないじゃうもんなんだねえ」
「う……うるさいなぁ、いいでしょ!」
「いやいや、別に責めてないんだけどさー。ねー? 藤野くん?」
「なんで俺に振ったんだよ」
午前中を使っていくつかの店を歩いたあと、昼前の混んでいない時間を狙ってカフェに入っていた。
女子はパンケーキとかでお昼は良いらしい。
俺は絶対足りないのでハンバーグを頼んでおいた。良かった、普通のメニューもあって。
「いやーどうなるかと思ったけど打ち解けてくれてよかったよー」
秋津がそう言いながらパンケーキを頬張っていた。
「荷物持ちって言う割にそんな買わないんだな」
ここまで買ったのは秋津の靴くらいでそれも自分で持っているくらいだった。
「あー、藤野くん、本番はこれからだから……」
「え?」
東野の言葉の意味が掴みきれず愛沙の方を見る。
「なによ……私のときはたしかに午前中からたくさん買ってたけど……」
「あれ? 愛沙がすぐ決めるなんて珍しいね。よっぽど気に入らないと最後まで迷って何なら次の日に買いに行くようなタイプなのに」
「そうだったのか?」
割と即断即決だと思ってた。
その様子を見ていた秋津が俺の方を見てすかさずこう言った。
「ははーん。よほど良い決め手があったわけね」
「なっ! ちがっ! そうじゃなくて!」
焦る愛沙。
って、これは俺も顔が赤くなりかねない。
それって要するに、俺が良いって褒めたから買ったってこと……だよな?
「はいはいー。まあ今日はこうやって男子の目線も取り入れられるし、午後はどんどん買い物しましょ!」
変な空気になりそうなところで東野がまとめてくれていた。
秋津がからかって愛沙が慌てて、東野がまとめる……で、その様子を眺める加納と。
口数は少ないけど加納もなんだかんだ楽しんでいる様子だけは雰囲気でわかるようになってきていた。
◇
「いやー買ったねー!」
「ん……満足」
東野と加納も紙袋いっぱいに服を買い込んでいた。
二人はまだ控えめなくらいだ。
「ほんと、よく買ったよねー」
「莉佳子だっていっぱいじゃない!」
「ま、私も貴重な男子の意見が聞けてありがたかったからさ」
こっちの二人はそれぞれが東野と加納の分を足した量より多かった。
当然持ちきれないので俺が抱えてるんだけど……。
「康貴くんありがとねー!」
「ああ……」
荷物持ちとしての役目は果たせて良かったと思うことにしよう。
「それにしても……愛沙はほんとにたくさん買ったねー」
俺から荷物を受け取りながら秋津が言う。
実際愛沙が買った量は今日圧倒的に多かった。
「康貴くん、次からもうちょっと絞ってあげないと、愛沙破産しちゃうよ」
ぱしぱし俺の肩を叩きながら秋津がそんなことを言い出す。
「ちがっ! これは……たまたまで!」
「はいはい。今日はしゃべるとボロが出るからこの辺で」
「もうっ、藍子まで……」
「愛沙、わかりやすい……」
最後は加納にもそう言われ、これでもかと言うほど愛沙は顔を真っ赤にしながらこう言った。
「違うから! 勘違いしないで! わかった⁉」
「えーと……わかった……」
「ふんっ」
そう言いながら顔をそらす愛沙が可愛い。
顔を真っ赤にして怒っているその顔が照れ隠しであることに、ようやく自分が気づけた瞬間だった。
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