勝負【愛沙視点】
おかしい。
康貴がこっちを見てくれない。
「ねえ」
「おう……」
なんでなの! 浴衣を着たら康貴は釘付けって言ってたのに!
どうしたらいいのまなみ?!
「花火、どのへんでみる?」
とにかく話題を繋ごう。何としても今日、告白まで持っていくんだ。
来年康貴と一緒に花火に行くのが別の子にならないようにっ!
「あー……無難なとこと、穴場狙いと、現地まで行くの、どれがいいかだな」
「そうね……現地まではこれで行きたくはないわね」
浴衣は歩きにくい。康貴にしがみつけるよとは言われたけどそれどころじゃないし、人が増えちゃうともうそんな雰囲気は作れないし。
「だよなー。そしたらまぁ、地元民のメリットを……いやだめだな」
「え? なんで?」
「人が少ないところを狙ったら絶対学校の奴らに見られるぞ」
「そっか……」
康貴は私と一緒にいるの、見られたくないんだった。
「一緒にいるの見られたら愛沙、困るだろ?」
「え? 私?」
私は別に良いんだけどな。
「いやまぁどこにいたって多少は見られるか……。大丈夫か?」
「私はいい」
「そうか」
やっぱりあんまり見られたくないのかな。嫌かな、私と付き合ってるとか言われるの。
「いいの?」
「だめなら来てない」
「よかった」
康貴はなぜか私を避けてるというか、私と一緒にいるのをみんなに見られたがらないなと思ってたけど、今日はそうじゃないみたい。諦めてるだけにも見えるけど、まぁいい。まなみも言ってたけど、こうやって既成事実を作るのが良いはず!
今日はいける……!
「じゃ、もう周りは気にせず楽しむか」
「うん!」
よし、今日の康貴は大丈夫。
あとは私が頑張るだけ。
「バス停、二つ前でいいんだったっけ?」
「うん。でも、降りれるかしら」
普通みんな終点まで乗るけど、回り道をすれば屋台はもうその辺りから出てる。
ただ今日はもうバスが混み始めていて降りられるかわからない。
「ま、降りれたらでいいよ」
「そうね」
二人がけの席に座っているから肩はぶつかる。康貴はそんなに嫌がらないから、せっかくならもうちょっとくっつきたい。
「ステージで何やってるか、一緒に見る?」
「ああ、そっかステージがあったか」
毎年花火大会の日は駅付近にステージができて、そこで地元の学生や有志の人たちの出し物がある。
去年はまなみがバトントワリングの応援でステージに上ってたから見た。
「なんかあるか?」
康貴が自然と肩を寄せてきてくれる。
どうせならもうちょっと混んでくれれば、ギリギリまでこうしてくれるのに。そんなことを思っていたら願いが通じたみたいで結局終点まで降りられるような状況じゃなくなってくれた。
今日はほんとに、運も背中を押してくれてる……! そんなことを思いながら康貴とお祭りの情報を一緒に調べ続けた。
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