看病9 お泊り

「あ! 康にぃ明日ひま?」

「ん?」


 愛沙の着替えを待つためにまなみと2人になったところで突然思い出したように声をかけてきた。


「暇だけどなんだ?」

「明日ねー、私ソフトの助っ人やるんだー! お姉ちゃんと見に来てくれないっ?」

「お、そうなのか」


 愛沙の体調も見る限りだいぶ良くなってるし、良いかもしれない。


「じゃあ行くか。愛沙にも聞いてみるか」

「わーい! おねえちゃーん!」


 俺を部屋に残して愛沙の部屋に走り込むまなみ。追いかけると良くないことになるのは学んでいるので大人しくまなみの部屋で待ったがもう着替えは終わっていたらしい。


「康貴にぃー! はーやーくー!」


 まなみの声に応えて愛沙の部屋に向かうと、そこにはなぜか白いネコ耳パーカーの愛沙がいた。


「な……なに……?」


 愛沙の「なに?」を久しぶりに聞いた気がする。いつもと違って鋭さがまったくないが。

 なんか言えとまなみが目で訴えかけてきていたので絞り出す。


「えっと……可愛い……?」

「……っ」


 白いパーカーに顔を隠しているせいで赤くなった顔が際立っていた。


「えへへー! これ可愛いでしょ!」

「まなみの仕業か……」


 パジャマを選んでたときに出してきたんだろうなあ。


「康貴にぃ、こういうの好きでしょ?」


 見透かされているようで悔しい。というか愛沙くらい可愛い子ならそりゃこんなことしたら誰でも喜ぶと思う……。


「あ、そうそうお姉ちゃん! 明日康貴にぃも来てくれるって!」

「そうなの」

「だから2人でこのまま一緒に来ればいいと思うんだー!」


 このままと来たか……。


「明日があるなら一回帰って準備したほうが良いから……」


 2人に無言で服をつままれた。


「布団もお姉ちゃんの部屋だし、私は明日頑張らなきゃだから寝ます!」

「えっ? まなみ?!」


 確かに布団はいま愛沙の部屋に敷かれているんだが愛沙も驚いているところを見るとまなみが独断で言ってるんだろう。

 なにか言おうとする愛沙を遮って、まなみが追い打ちをかける。


「私、寝てる間にパジャマ絶対脱いじゃうんだよね」


 突然何を……?


「だから康貴にぃと一緒に寝るとちょっと恥ずかしい……」


 ちょっとで済むのか……? いや待てまなみのペースに乗せられてる! このままだと――


「というわけでお姉ちゃんのことは康にぃに任せたので! しっかりお願いします!」


 遅かった……。


「じゃ、おやすみー」

「おやすみ……?」

「あー……」


 取り残された愛沙と俺は固まるしかなかった。

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