看病10
「えっと……」
どうしたものかと固まっているとベッドの上の愛沙から不安そうな声が漏れた。
「康貴は、一緒にいるの、いや?」
「嫌なわけじゃないけど……」
「けど……?」
それ以上は勘弁してほしい……。俺もその先の言葉がなんなのかはうまくでてこない。
「今日だけで、いいから……寝るまででも……いいから……」
縋り付くような声に目を向けると、潤んだ目で見つめる愛沙がいた。
「体調、まだ悪いのか」
「え? う、うん……そうかも?」
「明日やめとくか?」
「それはだめ! だめ……なんだけど……」
まぁ、体調悪いときってなんか人恋しくなるよな……。
「わかった……寝るまではって約束したしな」
「あっ」
ベッドの下にもたれるように座ると愛沙の声に喜色が浮かぶ。顔は見れないけどこのほうがお互いのために良いと思う。
「えっと……康貴?」
「ん?」
「上、来て」
「え……」
上? ベッドの? それは……。
「あ! あの! 座るだけでいい、から」
「あ、あぁ……」
拍子抜けしたような、安心したような不思議な感覚に襲われたせいで言われるがままに従ってしまう。
すると愛沙がぎゅっと腰の方にしがみついてきた。
「ふふ……ありがと」
「……」
「寝るまで……ね?」
不安げな声だが、その反面表情に小悪魔な微笑みを感じさせている。ああ、ほんとにこのあたり、まなみと姉妹だなと思わされるな。
「寝るまで……だからな」
「うん」
そう言って目を瞑る愛沙。
なんとなく髪を撫でると気持ちよさそうにしていた。
「これ、またやってほしい……かも……」
「はいはい。とりあえず元気になってくれ」
「うん……ありがと、康貴……」
そこからはどちらも声を上げることはなかった。
あ、まずい……俺もうとうとしてきたぞ……。
愛沙が寝るまではいることにしたが俺は帰ることを諦めていない。
と、言うよりこのまま一晩というのは色々厳しい。猫耳の愛沙はいつもとのギャップで心臓に悪すぎるし、昼間のこともある。まなみが言っていた「脱いじゃう」というのが、愛沙にないとは言い切れない……。
そうなったときに俺の理性で持つかどうかの自信がなかった。
「愛沙……?」
「んぅ……」
だめだ、しがみついたまま寝てる……。離れない……。
眠い……。
「康貴、おいで」
その言葉が愛沙の寝言だったか、俺の夢だったかわからないまま、身を委ねてしまった。
包み込まれるようにベッドに崩れ落ちてしまった。
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