看病7
風呂上がりに冷蔵庫から勝手にお茶をもらって愛沙の部屋へ向かう。
扉が閉まっていたのでノックをしたら中からバタバタという音が聞こえてきた。
「康貴にぃ! 早くない?」
「男の風呂なんてこんなもんだろ」
「そかそか、ちょーーーっと待ってね! 片付けるから!」
何をやってるのか知らないがバタバタと聞こえてしばらくして、向こうから扉を開いてくれた。
「ようこそ……」
「ああ……」
愛沙はあの際どいパジャマのまま俺を出迎えた。
「何やってたんだ……」
「えへへー。お姉ちゃんの下着の枚数がちゃんとあってるか確認をと思って」
「こらまなみ。馬鹿なこと言わない」
なにか隠したいことがあるらしい。まぁいいか。
「えっと……その、まなみがね、一番かわいい下着とパジャマを選ぶ! って、ひっくり返しちゃって……」
「えへへー」
反省の色が見られない。そして愛沙の服があれということは何も進展はなかったということだろう。
「病人に変な苦労をかけさせるな」
「あいたー!」
まなみを小突いて部屋にはいった。
「だいぶ良くなったんだな?」
「うん……康貴のおかげで」
愛沙の顔色は来たときに比べれば断然よくなっていた。まぁまなみがいたとはいえ風呂に入れるくらいだからな。この分だと今日しっかり寝れば大丈夫だろう。
「それでね、もうここまできたらうつさないと思うんだけど」
「まぁそうだな」
というかそれに関しては今更だ。まなみあたりは俺が来るまでもひどい状況の愛沙につきっきりだっただろうから、そう考えると明日辺りやばい気がする。
念の為まなみを呼んで近くにこさせる。
「まなみ」
「んー? なーにー?」
「ちょっとおでこ」
「ふふ……はーい」
手を触れて熱を見る。今の所大丈夫そうだな。
「康貴、私は?」
「え? 愛沙は体温計を……」
「……」
なんだこの無言の圧力……。熱があったのがわかってるのだから正確に計れたほうが良いと思うんだが……。
なぜか愛沙の目に涙が溜まってきた気がしたので慌てて近づく。
「えっと……じゃあ、触るぞ」
「ん……」
「んー……これ、どうなんだ……?」
やっぱり熱が出てた相手を触ってもよくわからなかった。
「康貴にぃ、よくわからないときはおでこ同士くっつけるんだよ!」
「いや、体温計を」
「おでこ!」
「康貴……」
なんなんだ! 愛沙が体調を崩すと常識人もブレーキもなくなるのが痛すぎる。
「わかったけど……さすがにそれは……」
「……」
潤んだ目で見つめる愛沙……。
こうなった愛沙は本当にずるかった。
「えっと……じゃあ、いくぞ……」
「んー」
なんで目をつむるんだ……。なんというかこう……キスを意識させられるような体勢で困る。
あまり時間をかけてもこちらの精神が持たないのでおでこをくっつけにいく。
「んっ」
頼むからいま変な声を出さないでほしい。というかこれ、俺も熱が上がってよくわからなくなるだけだ……。
「だめだ……結局わからん……」
「ふふふ」
目的は達成できなかったがおでこに手を当てて微笑む愛沙は満足そうだった。
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