看病6
しばらくソファで待っていると2人がようやくでてきた。
出てきたのは良いんだがなぜか正座させられて2人の前に座らされていた。
「康貴にぃ、お姉ちゃんの裸を見た罪は重いです」
まなみが前に立ち愛沙が後ろでコクコク頷いている。というか愛沙はなんでダボダボのTシャツ一枚だけなんだ……裾を必死に引っ張って伸ばしているが色々際どすぎる……。俺、ちゃんと下も持ってきたよな? あれ? ちゃんと確認してないから自信はないな……。
「ちゃんと聞いてますか! 康にぃ!」
「はい!」
「お姉ちゃんに見惚れてる場合じゃないよ! こんな際どいのしか持ってこないなんて!」
「いやわざとじゃ……」
愛沙が裾を引っ張ったまままなみの後ろに隠れるように一歩下がる。やっぱり俺が持ってきてなかったせいらしい……。いやわざとじゃないんだ。
「とにかく! 康貴にぃは私達の要求をのむ義務があると思います!」
一歩下がったものの愛沙もコクコク頷いて参戦してくる。
「えっと……今度埋め合わせをするので……」
「だめです!」
「だめなのか……」
どうすればいいんだ……。
「康にぃはさっき何故か帰ろうとしてましたが今日は帰しません」
コクコクうなずく愛沙。いいのか? 裸を見た罪は重いとかいうなら普通、遠ざけるものなんじゃないのか……。
「というわけで、康貴にぃはお風呂に入ってくること!」
「いや、着替えとかさ」
「キャンプのときの荷物、うちに置いたままでしょ!」
そういえばそうか……。帰りは愛沙もまなみも家の車で帰って荷物を高西家の車に積んだんだった……。
「いや……えーっと……」
俺としても愛沙の裸を実質2回も見ておいて平常心が保てる自信がない。
「康貴、いや……?」
それまで後ろに下がって裾を引っ張るだけだった愛沙が声をかけてくる。ほんとに愛沙、ずるいよなぁ……。
「いやでは、ないけど……」
「はい! じゃあお風呂に入ってきてくださ―い! あ、シャンプーとか説明するね!」
まなみに引っ張られるままに風呂場に向けて歩き出す。
去り際になぜか知らないけど何か言わなきゃと思って愛沙にも声をかけた。
「愛沙! 暖かくするんだぞ!」
「ふふ……ありがと」
なんだ今の、おかんか。
「はいはい行くよ康にぃー!」
引っ張られるようにまなみに風呂場に連れて行かれた。
「これがボディソープだけど、こっちに普通の石鹸もあるよ」
「どう使い分けてるんだ?」
「さぁ……?」
まなみは適当である。
「で、シャンプーとコンディショナーはこれがお姉ちゃんので、これが私とお母さんので、これがお父さんの」
「え? なんで3つもあるの?」
「さぁ……?」
まなみは役に立たない。
「で、どれ使って良いんだ?」
「どれでもいいんじゃないかなぁ? あ、お姉ちゃんの使ったらお姉ちゃんと同じ匂いが1日楽しめるかも?!」
「なんだそれ……」
その理論でいくとまなみとも同じことが言える。そう思うとやたら距離の近いまなみの髪からの匂いも意識させられてしまった。
いやでもこれ、絶対シャンプーだけじゃないよなぁ……。同じもの使ったってこうはならないだろ。なんで女子ってこう、不思議といい匂いになるんだ……?
「康貴にぃ、流石に風呂上がりでもちょっとはずい……」
「あっ、わるい……いや別に他意があるわけでは……」
しどろもどろになるが他意がないっていいのか? この場合悪いのでは?!
「私の匂いが良かったならこれ使えばいいと思うよー!」
「あ、あぁ……」
「はーい。じゃ、出たらお姉ちゃんの部屋に来てねー!」
「わかった」
そう言って洗面所から出るまなみ。
すこし頭を冷やす意味で、1人になれたのはありがたかったかもしれない。
「あ! 康貴にぃ!」
「おい! もう脱いでるから!?」
「あっ、ごめんごめん」
「なんなんだ……」
ほんとに自由だな、上半身だけでよかった……。
「お背中、流しましょうか?」
「早く上に行ってくれ……」
「むふふー! はーい! また後でねー!」
ほんとにまなみは……。
あいつはやりかねないしブレーキ役の愛沙はいま動けない……。
襲撃に怯えながらの風呂はあまり落ち着かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます