カラオケ
「じゃ、1学期お疲れ様ー!」
「「「いぇーーーい!」」」
「……いえーい?」
なんで俺はこんなところにいるんだろう。
「しっかし来てくれてよかったよー!」
「そうだな。藤野とは一回話してみたかったんだよ」
久しぶりに同級生に苗字を呼ばれた気がする。自分がいかに狭いコミュニティに生きてきたか意識させられることになった。
「いっつも愛沙がお世話になってるもんねー!」
「私は別に……」
「まぁまぁ、ほらほら! せっかく来てくれたんだからアンタが面倒見なきゃ!」
愛沙に絡むのは生徒会副会長、
「しかし俺、正直来ないと思ってた」
「それは俺もだな……」
サッカー部のエース、
「康貴くんも緊張しなくていいからねー」
隣に座るのはショートカットは吹奏楽部の部長、
「莉香子、あんまり愛沙の藤野くんにくっつかないほうがいいよ」
対面に座るのはフィギュアで全日本大会に出るほどの実力を持つ
そうそうたる面々だな……。女子は3人ともクラスで人気の美少女だ。
とはいえ愛沙と比較すると、贔屓目抜きにちょっと人気に開きがでるのが愛沙のすごいところではある。
愛沙に助けを求めるが「違うっ! 私のじゃないから!」とからかわれるままに盛り上がっているので効果がなかった。
「ま、せっかくカラオケに来たんだから歌おっか!」
秋津がそう言ってリモコンを渡してくる。
「俺……?」
「うんうん。あ、やりづらかったら愛沙と歌ってもいいよ?」
愛沙を見るとなにも言う前にすごい勢いで首を振られた。
「無理無理無理!」
そんなカラオケ苦手だっただろうか……? まなみとは結構歌うんだけどな。
断るのもやりづらい雰囲気だったので適当にランキング上位の曲をいれておいた。まなみの勢いだけのタンバリンと違ってちゃんとリズム通りに盛り上がってくれるのでちょっと歌いやすかった。
「おつかれー! うまいね!」
「ありがと」
声をかけてくるのは秋津が中心だ。助かるのは助かるんだが距離が近いのと愛沙が怖い。
「じゃ、次わたしー!」
秋津がリモコンをいじる横で別のを持った榎本に声をかけられる。
「おい藤野、これ歌えるか?」
「おい真。お前それ合いの手しかやる気ないだろ……全部藤野に歌わせる気だな?」
「俺が歌えないの隼人は知ってるだろ!」
どうやら榎本は歌が苦手らしかった。声はでかいんだけどなぁ。
「藤野くんー! 私とも歌おっかー!」
「あ、じゃあわたしも……」
東野と加納にも声をかけられる。カラオケは一緒に歌うときっかけが作りやすいからな。このあたりが普段からコミュニケーション能力が高いメンバーは違うなと思いながら、言われるがままに歌い尽くしていった。
途中で聞いた愛沙の歌声は、透き通っていて綺麗だった。苦手ってことではなかったようだ。
眺めていたら顔を赤くして背けられたので黙って画面に目を移した。
◇
サッカー部エース、イケメン
剣道部主将、漢気
吹奏楽部長、ショートカット、人当たりよし、小悪魔
フィギュア、クール、マイペース
生徒会副会長、ムードメーカー、まとめ役
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