まなみの作戦2 【愛沙視点】

 康貴と2人になってちゃんと喋れる自信はない。

でもせっかくのデートだ。嫌な思い出にはしたくない……。そうなったらもう、康貴とはそれっきりってことも……ありうるかもしれない。


「お姉ちゃん? 大丈夫?」

「ええ……」


 まなみの作戦……。しっかり聞かなくちゃ。


「お姉ちゃん多分、水着のサイズ合わなくなってるでしょ?」

「へ?」

「あれ? 私がみてる限り前の年のは入らないよね?」

「そうね……」


 なんでバレてるの。


「そりゃだって……毎日見てるから……おっぱい大きくなってるもんね」


 面と向かって言われると恥ずかしい。

 一方まなみは「私も同じ血が流れてるはずなのに……」と自分で胸を揉み始めた。


「それ、間違っても康貴の前でしちゃダメよ」

「わかってるよー!」


 そう言いながらも続けるまなみ。こういうことに関して言えば、まなみの信頼は0だ。まあ、康貴の前でやってもあっちもあっちでどうなのかわからないけど……。こないだも私の着替えを見て特に反応を示さなかったし……。


「お姉ちゃん? 大丈夫ー?」

「はっ。ええ……大丈夫よ」


 意識を戻す。今はまなみの話に集中しなきゃ。


「で? 水着がどうかしたの?」

「康貴にぃと出掛けるとき、買っておいでよ」

「え……?」


 水着を?


「水着。せっかくなら選んでもらって、試着までしてあげたら康貴にぃもドキドキすること間違いなし!」

「ドキドキ……? してくれるのかな……あいつが」


 着替え見ても無反応だったのに……?


「大丈夫! 絶対する!」

「そう……」


 想像しただけで胸が高鳴る。康貴が私を見てドキドキする……?

 もしそれが本当なら、かんぺきな作戦だ! さすがまなみ! 私の妹だけあるわ。


「水着を買いに行くってなったらさ、多分康貴にぃは聞いてくるの。誰かと一緒に行くのか? って」

「確かに……」


 その光景が浮かぶ。浮かんで想像して、今からドキドキしてきちゃう……。


「そこでお姉ちゃんがこう言うの。予定はないけど、誘われたら行くわね」

「そのくらいなら私もできるわね……」


 まなみが真似た私はそっくりすぎてすんなりイメージがわいた。


「そしたら康貴にぃが誘ってくれるよ」


 そのイメージは湧かない。


「大丈夫。そこは私に任せて!」

「そう……?」


 まなみが言うなら信じてみようかな……。


「あれ? でもそうなると次水着であいつと会うの?」

「試着を見せるんだから今更でしょ!」

「それはそうだけど……!」


 何なら今日下着まで見せてしまったけれど……。

 思い出すだけで私の方は今でも顔から火が出るほど恥ずかしい。今日来るのを知っていたのに油断していた私のミスだから何も言えなかったけれど……。

 だらしない格好を見て愛想をつかされていないか心配だったが、それは大丈夫だったので恥ずかしさは後回しになっていたのかもしれない。


 まなみが疑問を浮かべる中、今更恥ずかしさで転げ回りたくなっていた。


「最後のゴールが決まってたらお姉ちゃんも、まあ買い物くらいは大丈夫だよね?」

「そうね……」


 それまではあくまで荷物持ちと割り切ればいい。最後だけなんとか頑張れば、次も遊べる。


「ふふ。楽しそう。お姉ちゃん」


 本当に良い妹を持ったなと、改めて実感する。

 水着を買って康貴からの誘われるのを待つなら、それなら……。


「頑張ってね、お姉ちゃん」

「うん……」


 まなみには何かしっかり、お礼をしてあげなきゃね。私だけがいい思いをするのはフェアじゃないと思うし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る