第17話 中里毅

ない。

証拠がない。


ナビの履歴は貸付先と思しき企業名などばかりだ。

小まめに消しているのか?

いやいやいや、面倒だろう。

こんな所誰にも見られるわけがないんだから。

あるはずなんだ!

何よりさっきから織絵は山口の手を握りっぱなしじゃないか。

もう隠す気すらないか?


『なにやってんのよ!苦しんでんでしょこのひと!』

妻がヒステリーな声を上げる。

もう慣れたからどうということはないが、さすがにモタつきすぎて怪しまれる。



俺は適当に走り出した。


『あんだけ弄ってて結局ナビいれてないじゃないのよ!』

織絵め、頼む黙ってくれ。


『大丈夫ですか?この辺土地勘あるんですか?』と志村。


『大丈夫ですって。国道出れば病院くらい。』

と言いつつも国道に向かっているのかすら分からない。


と、そこで俺は突然閃いた。



そうだ、ナビには何もなくてもドラレコなら!


俺はドラレコを操作しようと左上のカメラに手を伸ばした。


その時織絵と美希と志村の声がほぼ同時に響いた。

『危ない!!』

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