第8話 志村誠

正直吹き出しそうになった。

なんだこのやり取りは。

漫才そのものじゃないか。


皆気付いているのかいないのか、この中里も中里でやたらと食い下がるではないか。

普段はドライな理屈屋なくせに。


ドライな理屈屋。俺は最初こそこの男と気が合うと思い込んでいた。

しかし違った。違ったらしい。


『中里さんは理論派。貴方は、何て言うかただただ冷たい所がある』

妻美希に言われたことがある。

無論納得はしていない。


『中里さんの言うとおりにしたら?救急車に乗った方が。』

美希も唐突に言い出した。

中里が目を輝かすと同時に山口は目を見開き、まるで裏切り者を見るように美希を睨み付けた。


『そうですよ。言うとおりにしなさい!』

中里はついに命令口調だ。

なんなんだこの男の熱意は。


怪しい。

こんなにサディスティックな奴だったか?

ふと啓示が降りてきた。

この男かも知れない。

貴様うちの子を…。

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