詩・ハジマリノウタ

【ストール】

　首元の寒さを感じるようになったら

　秋が濃くなってきた証拠

「女は首を暖かくせんといかん」

　という言葉を今でも覚えている

「しなさい」ではなく

「せんといかん」

　窘めるように

　でもそこは女同士の語らいのように

　子供の私に話す人だった

　素敵なものや可愛いものが好きで

　選んでくれたワンピースは

　何より私に恐ろしく似合っていた

　何十年も先を行くおしゃれさんは

　小手先ではかなうはずもなく

「こんな時代に生まれたかった」

　と私たちに語る姿は

　おばあちゃんらしさ　を求める外堀を

　拒絶するかのようで。

　あの頃より私はずっと大人になったけれど

　どこか無難な白いストールを巻く

　そちらはどうですか？

　好きなだけおしゃれを出来ていますか？