♮281:支流ですけど(あるいは、急いても/コトを/待てん郎)
おおお、展開が早過ぎる……ッ!!
マルオさん……いや「鋼鉄のオオハシ」無敗王ガンフの、下からの強烈なかちあげ……そして若草さんの高々度の宙を舞った正にの真空飛び膝蹴り……
完全なる肉弾戦が展開されたことに、あ、やっぱりそうなるよね……敵味方問わず血の気の多い人材が八割以上配置されているものね……との納得感はあったものの、これで彼我の戦力差は「7対8」まで詰まった。騎馬数の多寡ではもうほぼ優劣は無いと見た。
さらに場の中心には、墜とした敵騎から再び自分の騎馬に跳び戻った若草さんが態勢を即座に立て直して、迫ってくる相手の騎馬たちから「着手ボタン」の前に立ちはだかる位置にて構えている。その間にも若草さんに「DEP着手可能時間」は加算されていっているのが僕に装着された装置からも把握することが出来ていて。
すなわち、こちらがやや有利な状況なのでは……
今なら相手全騎が全騎、DEPを1秒も放つことの出来ない状態。イコールDEPを喰らっても相殺することが出来ない
どんなDEPでも、例え威力がそれほどでなくても、例のあの「電撃」が、この両肘・両膝に巻かれたプロテクターとやらから炸裂してくるのであれば、バランス崩して隙を晒す、あるいは、騎馬が崩壊してあえなく落馬……なんてことも狙えるんではなかろうか。
撃たない選択は無さそう……っ、そして願わくばそれで決まって、僕は後方待機のこのまま終わってくれればなお良し……っ、みたいな、先ほどまでの決意はどうしたと糾弾されそうなほどの思いが喉元までせり上がって来ているけど、やっぱり怖いんだよぉぉぉ……ッ
魂の慟哭をしつつも、若草さんのDEP炸裂を待っていた僕であったけれど、一向にそれが為される気配は無い。どうしたの?
「……!!」
極力ゆっくりと前方へ向かっていた我らの騎馬であったけれど、とうとう場の中央付近にまで、まろび出ていた。相手方とこちら側の騎馬たちが、やや向こう寄りの場でじりじりと睨み合っているような
流石に不審に思って目の先の若草さん騎に視線を飛ばす。そこには、
「……」
目を見開いたまま、騎馬の上で力無く硬直しているといった、相反するような状態で固まる若草さんの姿があったわけで。いつもは流麗に妖艶に、そして時に獰猛に虚無にと変化を見せるその顔も、半開きの口のまま尋常じゃない汗にまみれて所在なさげにふらふらと視点が定まらないままに移ろっているようで。
いったい……どうしちゃったっていうんだ?
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