♮239:奨励ですけど(あるいは、出陣/存在感の無いエース)


 「五番勝負」。だが、勝てば「二勝」が付与される「星付き」のカードが二枚、配布されている……


 ということは、最大で「七勝」が可能ってこと? あるいは、「三タテ喰らってからの四勝大逆転」があるってことか……? なるほど、ここの運営が好みそうな盛り上がりだけに特化したかのようなルールだねこれは……


 「星付き」は最低一枚、最大二枚、五番勝負で使用できるのだけれど……僕らの場合【T☆】、こいつの使いどころがいちばんのキモになりそうだ。それを使って勝てば「二勝」、まず勝利を決定づける一撃のはず。そしてさらに相手の「ダウト」を誘うことが出来たら……?


 ……相手の評点を半分に下げられる。その上でのDEP勝負になるから……まず確定の「二勝」を得ることが出来るわけだ。


 もうひとつ【F★】は……? 相手がダウトしてこなかったら二倍。これも勝ち確定のはず。ん? でもダウト看破されたら……?


<……はい、「星看破」された場合は評点を0.5倍され、さらにそれで負けた場合は、相手チームに『二勝』が入ると、そういう仕組みになっています>


 僕の心を読んだかのように実況の細く説明が。ハイリスクハイリターンってわけだ。どのみち使用するのは後半……ってことになるか? 使わなくてもいいわけだし。


 うん、やってみないと分からないほどの複雑さな気がする。でもおそらくは、DEPでの勝負という根底は変わらないはず。ワカクサさんサイノさん……は逆にこの「手札」での駆け引きを綿密に考えてきそうだけれど。であればこちらが考え過ぎるのはあまり意味ないことなのでは……?


 それよりも、僕は……自分と向き合うことが大事なんじゃないか? 先のアオナギ+マルオさんとの対局で、己の中の過去にしがらむ諸々を「淫なる獣」の力を借りて吐き尽くしたかのように思えた僕だけれど、まだ奥底にくすぶる何かを感じている……


「おう岬よぃ」


 色々な思考に脳内を占拠されつつあった僕の左耳に、翼のそんな気負いの無さそうな声がぽんと投げかけられてくる。


「おめーは色々考えすぎだ。悪い癖じゃねえのかそいつは? しょうがねえかも知れねえけどよぉ、それがお前の性分っつうんなら。……ま、お前はひとりじゃねえ。俺もここにありってとこを、遅ればせながら見せてやるとすんぜぇッ!! おぉう、何だか喋ってるうちに興奮してきちまった……いいか、こういう『ハレ』の場にあってはなあ……」


 横目で窺ったその日焼けた顔に、傲岸そうな笑みを浮かべながらそんなことを言ってくるけど、お前ほぼほぼ活躍の場無かったもんね……


「……とりあえずはぶちかますのが俺の性分だぜッ!! 自分でもワケわかんねえくらいなテンションに無理やり持っていってよお」


 うん、いや、じゃあ、ほんと頼みますわとしか言えんわー。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る