♮147:懊悩ですけど(あるいは、切羽/要事/クライマクサ)
「……」
何だかんだあったが、「第二予選」とやらは終結した、らしい。「射程距離」に他対局者を捉えるやいなや、傲岸なる我が淫獣DEPを撃ち鳴らかすと、相手を沈めに沈める中で僕らは加速を高めていき、遂には時速180kmを超えるほどの超速にてカッ飛び抜いたわけで。
なまじの絶叫マシンよりも驚愕な、違う意味で人間の恐怖の根源をえぐるかのようなこの「レース」を、何とか完走した。ずっと四つん這いという、絶叫マシンではありえないだろう的
今回のは、何かきつい。予選からきつい。世界大会だからだろうか。でも周りを見渡すと勝ち残ったのはほぼほぼ日本の方々と見受けられるけど。
いや、やっぱりいる。
恐ろしく澄んで鋭い目をしたメイドさん、そしてその傍らで執事のように慇懃に佇む整った精悍な顔つきの長身の男……アオナギがスカウトしてきただかそんな感じの説明を受けた異国のふたり……そこはやはり残ってるんだ。
ついでにそのアオナギとマルオさんも勝ち抜いたみたいだけど、その搭乗機はひどくアクロバティックな態勢を強要するものであって、お互い股をこれでもかと開いたまま、互い違いに重なるという、なまじっかの悪夢よりも叫喚なものであった……怖えよ。こんなのが飛来してきたら平常心を保つことの方が難しいよ……
<はい!! それでは出揃いましたね。『ファイナル予選』へと勝ち進んだのは、この『70組』です!!>
相変わらずのニュートラルなテンションの実況に促されるようにして、勝ち進んだ我々は、目の前の巨大ディスプレイに目をやる。
<No.00821/No.00999/No.03295/……>
……うん、そんな数字だけ出されても判らんよね……僕以外も多分真顔で流しただろう、いやな数秒沈黙の後に、おもむろに画面内に光が炸裂する。
<ファイナル予選:70組→20組>
3分の1以下に絞られるということか。ここまでを勝ち抜いてきた手練れを相手に先んずることが、果たして出来るか?
「ミサキよぉい」
そんな詮無いことを考えていた僕の背後からかかる、身内の気の抜けた声。翼……そう言えばさっきも何か言いたそうにしてたな……何かあんの?
「せっかくのメイド服、着てなくね?」
ああー、そうだね着てないね!! ほんと、こっちの張りつめた気をはぐらかすというか、もう何だ、絶妙だね、天性もんだね……
と思った瞬間、まさか僕を平常心へと持っていくため? との思いがふいに沸き起こってくるけどああそんなことはないか!! でも、言っていることは確かに。なし崩し的に開始された予選第一戦からこっち、シャバでの普段着で通してきてしまったけど、何となく逆に落ち着かないよね……よし、次からは!! ……「ファイナル予選」からはバリバリにキメて対局してやる!!
僕がそんな決意めいた思いを、無理やり胸に点火させるが如く滾らせるなか、次の対局形式が表示されるのだけれど。
<『
いや、わっかんねー。やっぱわっかんねーとこもわっかんねー。
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