♮131:転換ですけど(あるいは、微小諦観/TAKE ONE)
「「はるきげにあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」」
瞬間、僕と翼の全身にかなりの衝撃が。わ、忘れてた……さっきのコライとの闘いでは評点が僅差だったからこの「電撃」については微量過ぎて感じてなかったけど、今回のえらい差によって為されるそれは、本当に意識が飛ぶほどの代物だったわけで。何とか頬の辺りの唇上挙筋が上瞼とくっつきそうになるのを不断の意志で留めながら、しかし次の応対をどうしようか何も頭に浮かんでこない状態。
あっるぇ~? 僕の今の全部を吐き出したつもりだったんだけどなあ~。何があかんかったんだろう~、ほんまこの世界わっかれせんわ~
半笑いと苦悶の中間くらいの表情を多分浮かべながら、言語野辺りも電流にショックを加えられたのだろうか、放つ言葉も、翼並みに定まらなくなっている。
「負け」……厳然感のあるその二文字が頭のど中央に浮かんできてしまうけど。
ははは……やっぱり僕は淫獣さ。少しクセある、淫獣さ……
滅裂思考は、哀愁漂うメロディーに乗せられ、次第に脳全土を埋め尽くさんばかりに広がっていくと共に、まともな考えももうまとまらなくなっていく……
その時だった。
「ミサキッ!! 『けんか神輿』で二の矢行くぜッ!! お遊びはここまでだぜぁぁぁぁぁっ!!」
苦痛を堪えていそうな、だけど鋭いそんな叫びが背後から聞こえる。「対局」においての「負け」が確定するその正にの直前、すなわちエネルギーがカットされる寸前、僕らの機体はほぼ垂直に軌道を取って打ち上がっていた。翼だ。翼の舵取りが、意外なほど冷静に行われていたわけで。やるじゃないか。
次の瞬間、自然落下が始まるけど、これはもう先ほどと同じだ。上方からの掟破りの追撃。予想通りの弧を描くと、勝ちを確信したのか突然のことに対処が遅れたと思われる結城少年たちの機体に覆いかぶさるようにして僕らの機は斜め上方から追突したのであり。
がっちりと絡み合うようにして組み合う、両機体。四つん這いの姿勢の僕の顔面は、大きく割り広げられた金髪美女の薄いレオタード地に包まれただけの股間の紙一重前で停止していたのだけれど。セーフなのかアウトなのかは全くもって判別できない。
出来ないが……これが千載一遇のチャンスと、そう踏まえるしかもう道は無いんだ……
僕は自分では結構自信のあった「服飾DEP」がほぼ評価者にガン無視レベルでスルーされたショックから無理やり立ち直った体を見せると、対局を告げる声を絞り張り上げ、そして大きくまた息を吸い込む。
脳の中にはただ一文字、【淫】という立体文字が、勘亭流で力強く桃色のド派手な光を放ちつつも厳かに鎮座していた。
わかったよ、もういいよ。そうだよ僕は淫獣さ。もうこうなったら
その力……とくと全身になすり込んでやるからなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
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