♭119:多様かーい(あるいは、切っ先/ブレンダ/仏壇返し)
……うん、何だこれ。
一次予選を通過したのはいいものの、「次」と称されて通されたのは、またもや巨大空間であったわけだけど、そこに居並んだ「モノ」たちを見て、私と主任の顔から表情が周囲の空気に溶けだしていくかのような感じを覚えている……
コロッセオのような円形のライブホールのような佇まいだが、円形に何周にも巡っているのは、細いパイプが何本も組み合わさった奇妙な芸術作品らしきものであったわけで。
そして参加者の皆々が、それら装置然としたモノに奇妙なる格好にて律儀に乗り込んでいる姿はなかなかにシュールだ。いや、奇妙な恰好ではないな……見慣れたものから多分に日常ではお見かけすることないもの様々ではあるものの、二人の人間が向かい合いあるいは寄り添い合い、……うんまあ平たく言うと性の営み的な嗚呼これはもうまごうことなき体位だよ体位……それがご丁寧にざっと見96種類くらいありやがる……
運営ェ……前々から思ってたが、やっぱりアレだろ? もとより正気の沙汰じゃあねえんだよな……わかってたよ。わかってたけどもうちょっと手心加えるとかあんだろうよぉぉぉ……
どこにぶつけていいのか分からないままの感情を一応脳内で咀嚼してから、それでももうやり切る他の選択肢はない私たちなのであり。この辺の人心掌握の匙加減はやはり悪魔的だわ。
しかして、予選通過順位が相当あとの方だった私らに、「体位」の選択肢もそれほど残されてはいないのであった……
「押し車」は見た目からして腰いわしそうだし、「撞木反り」は男役の方、前方見えないよね……あ、いや「岩清水」があったわ……完全顔騎じゃねえか、いくら体と体は接していないとは言え、狂気過ぎんだろ……
結局、脚を閉じて仰向けになった私の上に、上半身を反らした主任が覆い重なるという、選択肢の中ではまあましなやつをチョイスしてみた。ましと言えども狂気であることはいささか疑いようもないのだけれど。
「……案外、最適解かも知れない。この『搭乗機』を操り、VR空間で何らかの『戦闘』を行うというわけだ。であれば、どちらが上になるか分からなくなる場合も想定される。このたい……せいであれば、ぐるり半回転してもどちらかは正対することが出来る」
賽野主任のその凛々しい顔を30cmくらい下方から見上げてるのはいいんだけれど、この戦いに賭ける姿勢というのがね、何か私とうまくかみ合ってない感がして、それは少し不安だ。
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