♮034:執拗ですけど(あるいは、モラとリアムの/デフォルティック)


 抜け出すことがおそらく不可能であろう底なし泥濘ぬかるみに膝上まで突っ込んだ体だけど、ここまで来たら肚をくくるしかない。それに今回の形式……「タッグマッチ」って言ってたけど、それの詳細を聞いておくことは重要だ。


 前回、僕が参加した時は、「三人一組」だった。ひとり減ることによって、例えば対策とかが立てやすくなるのでは……と、そこまで考えて、いや、そもそも何が来るか分からないんだった、と思い返す。僕の脳裏に、様々な形式だった前回の試合模様が阿鼻叫喚のビジョンとして浮かび上がってきてしまい、何とも言えない胃もたれ感が、上方へとスライドしてまるで脳で起こっているかのように感じる。


『赤上げて青上げて!上げない場合はノーカンです』……

『罵倒×バロゥ』……

『ワンフレーズ×ブレイズ』……

『スライド×プライド』……

『総当たり×総選挙』……

『ニュートラル×セントラル』……


 大脳が胸焼けしそうな濃いい字面がぽこぽこ浮かんでは消える。先だっての予選の時の「ランダムルール」を逐一思い出せる自分に驚くけど、これらを予測すんのは不可能だろ。


『限DEPジャンケン』……

DEP戯王デプぎおう』……

DEP戯王デプぎおう・DX』……

『ロケティック=ローラーヒーロー』……

『6人バトルロイヤルと思わせた、ただの物理撃ち合い』


 ……決勝はさらに度し難かったことが、こうして頭に思い並べることにより浮き彫りになった。何というか、あれだな、その場その場感が凄いわ!! 何が「DEP戯王デプぎおうだよ、人を小馬鹿にしやがってぇぇぇぇぇぇ……


 諦めた。何がどう来るかは皆目見当つかんわ。でもそれは参加者みんなに言えることだから平等か。いや……そう決めつけることも早いし甘すぎるか。前回の「元老院」みたいのが、いないということにはならない。いや、高確率で存在するはず……っ!!


 ……その上で、勝ちを得なければならないわけで、うーん、ま、やってみるしかない。やれるだけのことを。それよりも、


「誰なんですか、その最適なパートナーとやらは」


 ペアの相手がどんなヒトかということの方が重要なんじゃあないだろうか。僕は畳の上ですっかりくつろぎ始め、菓子うけに盛られたチョコレートを摘まみ出した丸男を見やり、そう尋ねる。


「くくく、そいつぁ来てからのお楽しみってやつだぁ。ま、『奴』が来るまであと30分くらいはかかるからよぉ、その間、ちょっくら今回の倚戦きせんについて、さらりとおさらいするとしようぜぇ」


 何となく、この目の前の人物が、もう丸男なんだか、痩男アオナギなんだか判別しにくくなってきた。往年のアオナギばりのこちらを襟首をつかんで引き寄せるような物言いに、あれ? やっぱり曲がり角で正面衝突したショックで融合しちゃったんじゃないの? みたいな、どうでもいい思考に嵌まりそうになる。いかんいかん。と、


・第一予選は、『二勝抜け二敗落ち』のバトルロイヤルである。

・対戦する相手は、双方が了承し合えば成立する。拒否権もあり、何度拒否してもよい。

・ただし、勝ち抜け出来るのは、『先着1600組』までとする。


 ……まずそんな事をのたまってきた丸男だけど、案外あっさり普通なルールに拍子抜けしてしまう。まずは、ふるい分け、みたいな感じなのかな。いや違うな、まずツッコむべきところはここだ。


 参加者多ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!


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