♭033:創出かーい(あるいは、振り返れば/ダメがおる)
……主任に改めて念押しされたけど、「嘘御法度」は当然心得ているわけで。
その上で、「盛る」みたいな戦術を見越しているんだろう。「日本語の曖昧さ/多義性」とやらで、過去の私も反則スレスレの手を使って何とか切り抜けた件もあるし。「嘘八百の出まかせを巧みにコーティングして強力DEPを錬金する絶技」、みたいにアオナギに評されたこともあったっけ。ま、でも「アレ」はたまたまうまくハマっただけだ。
実際そうまでクリティカルにDEPを強化することは難しいだろう。それでも自分の「持ち札」は事前に把握しておいて、それを効率よく磨き上げておくことは大事なんだろうな、とも感じている。何か、ソシャゲカードゲームのような様相を呈してきているけど。
そう言えば先の
思い出さなくてもいいもの、思い出してはいけないものも込み込みで。嗚呼、「浄化」されたとは言え、それに伴う血膿の放出量もハンパ無かったよなあ……どんだけ痛みを伴わせるんだよ、ダメの野郎は。
いや、過去は過去だ。そこは割り切らないと今回を戦い抜くことなんか出来やしないと思うし、過去こそが「武器」になる戦いだ。気合いを入れて向き合って、持てるDEPの全てを極限まで盛って、そこから余分な部分を削りこそぎ落として。
……無駄なく飛んで、無理なく刺さる。そんな、研磨されたメスのような斬れ味のDEPをどんどこ作っていかなければ駄目だ。もう戦いは始まっている。世界を相手にするには、簡素ながらもどこまでも鋭利な、そんな代物が必要なはずだ。
でも、かなりの困難を伴うは伴うんだけれど、そのスタンスでいけば、主任に私の生来の
盛っちゃいましたぁ、てへ、みたいに、逆転の発想で、「現実に起こした悪魔的所業をあくまでオブラートで厳重に包んだだけのもの」を、さも大袈裟に盛ったかのように、カモフラージュできる可能性は、大だ。
何せ、見事この「何とか戦」を勝ち抜き巨額の賞金を得たとしても、私には第二の人生が待っているわけで。そこでおじゃんになったら、元も子もないと思うから。
寄り道した百均の明るい店内に突っ立ちながら、主任の柔らかげな垂れ目を思い出す。トコロテン押すタイプの水鉄砲を、やっぱりあおかなぁ、あかはおんなだしなぁ……と5分くらい迷っている聡太の横顔とそれらは重なって。
……何故かわからないけど、ふんわりとした心地よい感覚と、靴の中に入った意外な鋭さを持つ小石を踏んだ時のような、そんな感覚が入り混じってしまい、何とも言えない気分に陥る私がいる。
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