第2話 じゃあ、親とか故郷とかってなんだ

 私はともかく、家にトイレットペーパーない人はいなかろう。米もあるし冷蔵庫には保存食があり、腐らせてしまう人もいる。


 これ以上なにが欲しいのだろう。幸せとやらであろうか。


 親世代は戦後高成長時代、当たり前とやらをたくさん作った。妻をめとらねば、子どもをつくらねば、家をたてなければ、会社にはどんなに這ってでもいかなければ、定年までおなじ会社で働かねば、自由業なんてとんでもない、安定した勤め人になりなさい、いい学校出ていい会社に入りなさい、普通に暮らしなさい、年長者には従いなさい。いい学校はいるのは、あなた方の見栄のためではないのですか。自慢したいだけではないのですか。


 それから、体に悪いから、たばこは毒だからやめなさい、遊んでばかりいてはだめです、酒は夜にならねば飲んではだめです、食事は決まった時間にとりなさい、って、そんなことし始めたのあなたたちの世代だけでしょう。昭和二十年代なんてむちゃくちゃ自由だったはずだ。いま、もうなにかにしばりつけられて生きているみたい。


 その結果がこれだ。みんな幸せだろうか。大企業たくさんつぶれましたよね、責任も取らずに年金もらっていいですよね。一方でいい学校でてるひとが、それに見合わない職業をしてたりする。でも、それで幸せそうだったりする。


 あなたたちに言う。もう、うんざりなんだ、太宰さんは女性を何人かかえてましたか、まともな暮らしをしていましたか、でも文豪でエライ人だとあなたたちは教えてるし、教科書にも載っている。


 ほんとにもう、常識なんてやめてくれ、押し付けるのも。人の目なんか気にしなくていい、というよりもあなたたちの目なんか気にしたくはないけれど、金持ちだからしかたないんだ。欧州人、米国人、アジア人、みんなそんなにあなたたちの言うなりになっているだろうか、なっていないだろうに。


 普通は金持ちの親がいたとしたって、では幸かというと、そうでもなく、私のように弱い人たちで、優しいが自己中心的で、モノばっかりいっぱいあって、でもいつもこころは満たされていなくて、そんなの望むべき人の暮らしだろうか。

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