お姉ちゃん。貸して

「どう? 旦那君?」

「……」

「何か言いなさいよ!」


 言葉に困っていたらレニーラが怒りだした。


 いつも通りにポンッとした感じで宝玉から姿を現した彼女は、何故か服を脱いでタオルを材料に服を作り出したのだ。


 簡単な作りの割にはエロい。とにかくエロい。


 一緒に見ているポーラなどは顔を真っ赤にしてどこを見れば良いのか分からずに視線を彷徨わせている。

 ノイエは……こっちを見て『あれが良いの?』と言いたげな視線を向けて来ている。


 あれはあれで確かに悪くないけれど、あんな扇情的な衣装は僕の前でしか認めない。


「って、エロ過ぎるわっ!」

「エロって何さ!」


 どうやらエロと言う単語はこの世界で知れ渡っていないらしい。


「この姿を見て何で興奮しないのよっ!」

「興奮はするさっ! だがそんな姿で何処に行くっ!」

「どこにも行かないわよっ! 旦那君を誘惑する衣装なんだしっ!」


 額をぶつけてレニーラと吠え合う。


「誘惑するならそんな衣装など要らんっ!」

「要るの! 私は天才と呼ばれた踊り子なんだから!」

「だからってそんな半裸みたいな衣装は要らんだろうっ!」

「むしろ全裸の方が良いの! 何も着て無い方が動けるんだからっ!」

「なら全裸にでもなってろ!」

「むきぃ~!」


 怒りに任せてレニーラが作って服を脱ぎ捨てて部屋中を駆け回る。

 やはり踊っているだけあってプロポーション抜群だな。


「おねえさま。はだかは」

「うな~!」


 怒れるレニーラをシーツを手にしたポーラが追う。

 本当に優しい子だな。我らの義妹は。


 ポーラはノイエを『ねえさま』と呼んで、後の姉たちは『おねえさま』と呼ぶことで区別するようになった。

『ねえさま』はノイエだけらしい。何だかんだでポーラはノイエが大好きなようだ。


「ノイエ」

「はい」

「レニーラって昔からあんなに元気だったの?」

「……はい」


 成長の少ない奴だと理解した。


 とりあえず駆け回るレニーラはポーラに任せ、僕らは寝室を出る。

 寝間着姿のノイエと一緒に衣装室へと向かい担当のメイドさんにノイエの下着を出して貰う。


 出来たらビキニタイプの下着が良い。色は……原色系の明るいのが良い。赤とか黄色とかかな。


 ノイエの赤いブラをゲットして、ショーツも色を揃え紐パンのヤツをゲットする。


「後は……レース素材のショーツとか無い?」

「ございます」


 メイドさんがレースのショーツを取り出してくれた。

 ノイエ用に色々と服や装飾を集めておいて良かったわ……って装飾もか。


 準備した下着をノイエに預け、次いで僕らは宝飾品を入れている金庫室へ向かう。

 主に現金や金の延べ棒が置かれている場所だけどそれなりに宝石の類もある。

 ネックレスの類や手首や足首に巻き付ける宝飾を適当に選び出した。


「こんなもんかな」

「はい」

「分かってないなら頷かない」

「むっ」


 若干拗ねたノイエを連れて部屋に戻ると、何故かポーラが悲鳴を上げていた。

 何事かと覗けば、レニーラがポーラの寝間着に手を掛けて彼女を剥こうとしていたのだ。


「こらこらレニーラ君。ウチの義妹を……つまり君の義妹をイジメるでない」

「妹なら姉の玩具にするのよっ!」

「あんなことを言ってますよ。あのお姉ちゃんが?」

「……」


 沈黙したノイエに見つめられ……レニーラがポーラの服から手を外す。


 泣きながら逃げて来たポーラはほぼ半裸だ。

 抱き付いて甘える彼女の頭を撫でながら服を元に戻す。


「で、そこの全裸の生き物よ」

「何さ」

「そこに立ちなさい」

「……」


 拗ねまくっているレニーラだが、命じたら素直に従う。


 まずノイエの下着を身に着けて貰い、腰にレースのショーツを巻く。

 あとは質より量で持って来たネックレスをショーツの上から何本も巻き付けて、手首や足首にも飾りをはめてみる。


「問題発生だ」

「どうかしたの?」

「ここまで来ると髪型も弄りたいが……僕には髪を弄る技術が無い」


 女性の髪をどうこうする技術など地球時代でも身に覚えが無いわ。

 よってここは……こっちをぼんやりと眺めているノイエの背後に居るポーラに向ける。


「ポーラ」

「はい」

「髪の方は弄れる?」

「すこしなら……ねえさまでれんしゅうしました」


 経験者と言うことでポーラに一任する。

 レニーラを椅子に座らせポーラには椅子の上に立って貰った。


 櫛を入れながら髪を整えていくと……衣装も相まってレニーラが物凄く綺麗に見えるのです。


「これでいいですか?」

「そうきたか」


 簡単にポニーテールを作り、髪を束ねる糸の上からネックレスを巻いて髪飾りとする。

 尻尾部分にも長いチェーンの物を緩やかに巻いて……どこの美人だこれは?


「お~」


 姿見の前に立ったレニーラが腰を振って衣装の具合を確認する。


「旦那君」

「何かね?」

「胸がキツイかな」

「……」


 姉の言葉にノイエが自分の胸に両手を当てる。


「あともう少しお尻の部分の布が要らないかな」

「だったらTにしてしまえ」

「なにそれ?」


 ポーラに説明して実行して貰う。

 レニーラの下着が綺麗なT字になって、形の良いお尻がより露わになった。


「うん。悪くない」

「ただそのレースも赤い物に変えたいよな」

「なら任せた」

「……まあ良いか」


 コニーさんに頼めばどこからか良質のレースを見つけ出してくれるだろう。


「でもいい感じだね。動きやすくて」

「だろうね」


 ぶっちゃけ今のレニーラの衣装はベリーダンサーにしか見えない。

 テレビで見たエロい衣装を着た女性のダンサーを模して作ったのだから間違いじゃなけど。


「アルグ様」

「どうしたのノイエ?」

「……」


 僕の隣りに居たノイエがスケスケのキャミソールを脱ぎだした。

 全裸となって……何故かレニーラの元に歩み寄る。


「お姉ちゃん。貸して」

「これを脱いだら全裸になっちゃうから嫌~」

「貸して」

「いや~」


 跳ねるように逃げ出すレニーラを全裸のノイエが追い回す。


 しばらくその競争が続いて……見かねた僕はポーラにお願いしてノイエ用に一式揃えて貰った。

 ただ戻って来たポーラは何故か自分の分まで抱えていて、気づけばベリーダンサーが3人に増殖したのだった。




「ん~」

「ご機嫌~だね~」

「良いでしょ~」


 ベリーダンサーの格好で戻って来たレニーラは、軽い足取りで踊り続けている。

 それを見つめるシュシュはメイド服のままだ。


 何となくその場を通りがかったカミーラは……賑やかな場面に軽く笑って通り過ぎるのだった。




~あとがき~


 有言実行と言うことでレニーラが新しい衣装に。


 何となく踊り子ってベリーダンサー的な衣装を想像しちゃう作者なのです。

 と言うかあれってほとんど水着だよね?




(c) 甲斐八雲

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