どうも済みませんでしたっ!

 レニーラが軽い足取りでその場を退くと……駆けて来て一本足ドリフトで踏ん張った彼女が、青い髪を振り乱して飛び込んで来た。


「何処! アルグちゃんは……アルグちゃん!」


 目が合った瞬間、真っすぐ飛んで来た。


 うん。最初にぶつかったのはお姉ちゃんの大きな双丘でした。

 それの間に挟まるように顔がスポっと……で全力で挟まれるのです。


「アルグちゃん! もう大丈夫よ! 馬鹿なグロ―ディアは永遠に復活できないように毎日刻んで木っ端みじんにするから! だから何も心配しないで良いんだからね!」

「息っ! お願い……呼吸の心配をして!」

「ああっ! こんなに震えて! いっぱい怖い思いをしたのね? 大丈夫よ。お姉ちゃんの胸でいっぱい泣きなさい! 甘えなさいっ!」

「溺れる。胸で溺れる」


 ぐいんぐいんと挟んで来る凶器から必死になって頭を引き剥がす。


「そんな……良いわよ。アルグちゃんがしたいならお姉ちゃんはどんな場所でも!」

「……」


 顔を引き剥がす為に掴んだものが悪かったらしい。

 変なスイッチが入ったお姉ちゃんの胸から両手を放すと、彼女はいそいそと服を脱ぎだす。


「さあ好きになさい!」

「全てを晒してひっくり返るな~!」

「ならこうが良い?」

「そっちも良いけど……って、服を着ろっ!」


 仰向けから四つん這いに変化したお姉ちゃんの誘惑が半端無い。

 小柄なのに凄く大きい。何よりその顔はお姉さんと比べて遜色無いほどに綺麗だ。可愛らしさがある分ノイエといい勝負だと?


「……」

「はい?」


 何かに背中を引っ張られた気がして振り返ると、こっちにはとても小柄な少女が居た。

 栗色の髪をした前髪で完全に目を隠している隠れ美少女系のオーラが半端無い。


「アルグ、スタ、様……うふふ。あはは」

「落ち着こうかファシー! 流石の僕もそろそろ色々と限界だよ!」


 抱きしめて引き寄せてこれでもかと背中を撫でる。

 口元をフニャンとさせたファシーが沈黙した。ってあっぶな~。ファシーも居るの忘れてた。


 とりあえず胡坐をかいて座り、膝の上にファシーを座らせる。

 子供の相手をしているような感じになるけど、笑っていないファシーは可愛いから良いのです。

 それにこれは絶対前髪を退かしたら美少女パターンだ。何とポテンシャルの高い子なんでしょう。


「もうアルグちゃん。お姉ちゃんも相手して欲しいぞ」

「好きに甘えて下さい」

「甘えちゃうんだから~」


 言って背中から抱き付いて来たホリーの胸が凄い。

 ルッテぐらい大きいけど、身長とかその他のものを鑑みると凄く大きいかもしれない。


「何だい何だいやかましい。おっ……何でノイエの旦那が居るんだ?」

「……カミーラか」

「何処見て私と判断した?」

「髪の色ですが何か?」

「へ~」


 本当に髪の色ですから。赤髪は先生とカミーラぐらいしか居ないはずだし。


 冷めた視線でこっちを見つめて来るのは長身で筋肉質のカミーラだ。

 綺麗とか言う類では無く格好良いなタイプである。男装したら女性にモテそうだな。


 ただ左腕が無いのと右腕にはグッタリとした荷物を抱えている。

 長い金髪が見えるから……たぶんグローディアっすか? 何したの我が従姉さんは?


「まっ丁度良い。そこで後宮の主を演じてて良いから、コイツの処分に立ち会いな」

「ぐふっ」


 荷物を投げ捨てて踏みつける。カミーラの姐さんがマジで怖いです。


「あのちょっと?」

「何だい?」

「うちの従姉……何したんですか?」

「色々と悪さをしてたんだよ。それが今回発覚してね……流石に黙って誤魔化せる事態じゃ無いからこうして罰を与えるんだよ」

「大丈夫よアルグちゃん。私が責任をもって毎日刻んで二度と復活しないようにするからね」


 背中に抱き付いているお姉ちゃんの双丘の圧力が凄い。本当に大きいのだけれど、何と言うか何かが違う類の巨乳だ。それは良い。勝手に押し付けて来るからセルフで堪能すれば良い。

 何より膝の上のファシーが可愛すぎてこのままお持ち帰りしたいんですけど。ダメですかね?


 そもそも現実逃避する必要はなかったな。うん。


「あ~。つまりバレちゃったの? グローディアのあれとかが?」

「そう言うことだよ。この馬鹿は私たちが黙っていたのに今回の騒ぎで引っ込みがつかない事態にした。

 そうなると流石に全部を晒して罰を受けるしかない。まあこの中に居れば死にはしないけど……ホリーのように毎日刻むとか言い出す奴は居る。あの日勝手に殺人鬼にされちまったんだ。仕方ないだろう?」


 言いながらカミーラは金髪な頭をグリグリと踏んづける。

 流石にその姿は見てて心苦しいです。


「そうだ。旦那君も被害者だからグローディアに何かする?」

「余計なことを言わなくて良いの」

「あはは~。ノリが悪いな~」


 言ってレニーラが僕の左腕に抱き付いて来た。

 残っているのは右腕ぐらいだけど、気づけば美人と可愛い子に囲まれたハーレムな状態です。

 うむ。これはこれで悪くない。ベッドの上で全員に求められたら死ぬけど。


「まっレニーラの言葉には一理あるな。この馬鹿を犯すなり傷つけるなり好きにして良いぞ」


 カミーラが足を退けて蹴って来た。

 ゴロゴロと転がって来たグローディアは、顔とか汚れているけど確かに美人だ。美姫と言う噂は事実だったらしい。


「……何よ?」

「何か酷い姿になって」

「煩いわね。私のやったことを怒っているなら好きにすれば良いわ」


 グッタリとして視線だけ向けて来る彼女はある意味いつも通りだ。

 キャンキャンと来る人全員に吠える犬のように見える。


「で、どうしてこんな姿に?」

「捕まえてたんだけど逃げ出してね。だから逃げられないように両足首を捩じって折った。それ以外の怪我は別のことで受けただけだよ」


 もう興味が無いと言いたげにカミーラはそう告げると壁際に移動して、背中を預けてこっちを見る。


「さあ見せな。お前はその馬鹿にどんな罰を与えるんだ?」


 ホリー達が僕から離れた。


 やっぱりここで罰は無しとかだと許してくれないか。だったらやることは一つだ。

 立ち上がりグローディアの傍に行って、転がっている彼女を力ずくで座らせる。

 泣き出しそうな表情を作っている従姉の横に並んで座り、僕は彼女の後頭部を掴んだ。


「この度は……どうも済みませんでしたっ!」


 相手の頭を床に叩きつける格好になったけど、とりあえず2人で土下座した。




~あとがき~


 ハーレム発生です。そして初めて語られる住人たちの詳しい外見。ファシーは初期設定からこんな感じでしたw 流石最終兵器だ…でもまだ奴が残っている!




(c) 甲斐八雲

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る