第10話 微笑ま~と思うのは周囲だけです



いそいそとギルドから出て来たクラウドは、ギルドの入口でこれからどうしようかと考え込む。


「ん~…。」

考えながらふとパピヨンに視線を移せば、尻尾がぶんぶん振られている。

クラウドは屈んでパピヨンを頭、背中と撫でながら…


「あ、名前付けないと、何が良いかな?…ポチ?」

クラウドがポチと名付けるとパピヨンの振られていた尻尾が急に元気がなくなり、

しゅんっと垂れ下がる。


「え?この名前は駄目だったか…ん~…あっ、男の子か女の子の確認が先だった…。」

クラウドはパピヨンを雄か雌かを確認しようと抱え上げると…

抱えられたパピヨンはじたばたと暴れ出す。


「あ、こら、暴れるなよ。」


パピヨンを抱えるクラウドと暴れるパピヨンの姿は、傍から見ればじゃれ合ってる様に見える。


「うん、見てて微笑ましくはあるんだけどね…ギルドの入口でやるのはどうかと、お姉さんは思う訳です。」

「あ、すみません。」


クラウドの背後から女性が声を掛けてくる。振り返って謝罪すれば、昨日出会った3人娘の1人アネラであった。


「いやいや、良い目の保養になりました。ごちそうさまでした♪」

そう言ってアネラは手を合わせる。

「ごちそうさまって…。」

「まあまあ、周囲を見てごらん。」

「え?」


そう言われて周囲を見ればこちらを微笑ましく見ている者達が大勢いました。

うわ~恥ずかしい…。


クラウドはギルドでの出来事以上に恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俯きます。


「へ~このゲームはそこまで顔色が変わるんだ…。」

何処か納得したような言葉をアネラは呟く。


「取り敢えず、さっきの映像マイとユイに見せても良いかな?」

「え⁉さっきのって…。」

「そうさっきの、そこのパピヨンとじゃれてた映像だよ♪」

「映像撮ってたんですか?」

「うん♪あれを記録に残さないのは世界の損失だよ!」

「損失って程のことはないと思うんですけど?」

「そこは人それぞれだよ?それで良いかな?」

「はぁ~良いですよ、でもマイさんとユイさんにだけですからね、他は駄目ですよ?頼みますよ。」

「は~い♪」


この歳になってここまで恥ずかし思いをしたのはも久しぶりだ…。


「そうだ、クラウドくんはこれから時間ある?」

「時間ですか?ありますけど?」

「それなら一緒に何か良い依頼探してみんなで回ろっか?」

「みんな?回る?…ですか?」

「うん♪マイとユイ、それと私ね、回るのは…街の外を見て回りながら達成できそうな依頼。」

「ああ…はい♪分かりました。」

「クラウドくんは良い子だな~。」

何故頭を撫でられる?

「…うん、クラウドくんもモフモフだね♪」

「だね♪と言われましても…。」

「あははは♪もう少ししたらマイとユイもインすると思うから先に依頼探そうか。」


アネラはクラウドの手を引いてギルドの中へ入って行く。

クラウドはギルドでの出来事よりさっきの方が恥ずかしいので大人しくアネラに手を引かれるまま再びギルドへと入って行く。

その後をクラウドのパピヨンとアネラの狸が後を付いて行く。




ギルドの中に入って掲示板の前には数人の人が居ます、おそらくプレイヤーさんでしょう。

僕とアネラさんは掲示板の前で依頼を探します。

猫探し、犬探し、森でリスザルの捕獲、ムササビ捕獲、etc.etc…。


「これって…猫探しや犬探しでお金を貯めて、それから捕獲アイテム購入してから捕獲依頼を受けろってこと…だよね?」

「たぶんそうなんでしょうね。でもお詫びで5000Gありますから。」

「あっ、そうだ!グラウドくんはホーム持ってたんだった!」

「え?そうですけど…アネラさんもお詫びで5000G送られてきてるんですよね?」

「そうだけど、あれでホームを購入するか、もう少し貯めてワンランク上のホームを購入するか迷ってるんだよね~。」

「ワンランク上?」

「そうだよ?5000Gだと物置小屋程度のホームしか買えないんだよ、増改築出来るけど、増改築するよりもお金が1000Gほど安く済むんだって。」

「へ~そうだったんですね。」

「らしいよ?モフ神様のサイトに載ってたから。」

「モフ神様?」

「うん、なんか100万のホームを購入して既に最大の100匹を飼ってるんだって、しかもアニマリートショップに居たあの高額アニマリートも購入…羨ましいよね~。

あ、サイトに載せてあったスクショあるよ、これ♪」


アネラさんが見せてくれたスクショには豪邸と牧場?と思わせる広大な囲いの中にたくさんの動物が居る画像。

鳥小屋や厩舎らしきものも完備。

それと…畑で収穫可能な餌、たくさんのビスケット。

それを収穫している動物たち。


「これなんか可愛いよ♪」

次にアネラさんが見せてくれたのは動画で、餌を収穫しようと手を一生懸命上下させてから、ぴょんっと跳ねて両手で挟むように餌を収穫するスナネコ…

可愛い…可愛過ぎる…。

「はぁ~♡可愛すぎです、スナネコ飼いたいです。」

「だよね♪だよね♪でもスナネコの情報が全然ないんだよね…。」

「情報が無いんですか?」

「そうだよ、サービス開始して3時間で緊急メンテに入って、メンテ明けで4時間経った頃にはこの映像がアップされてるから…。」

「時間的には7時間を切ってる…。」

「そうなんだよ、チュートリアルとかの時間もあるから、実質6時間切るぐらいじゃないかな?と私は思うんだけどね、その短時間にこれですよ。」

これですよ。と言いながら先程の画像を目の前に突き付けられます。


「……6時間かどうかはともかくとして、そんな短時間にこれだけの動物を集められるとするならアニマリートショップ以外にないと思うんですけど…。」

「私もそう思って、覗いてみたんだけど…スナネコのスの字も見当たらなかったんだよ…。」

「僕も今日、チュートリアルでアニマリートショップに行きましたけど、見てないですね…。」

「謎だよね~。」

僕とアネラさんは掲示板の前で考え込みます。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る