救済の魔女として魔王様に召喚されました

飛鳥井 真理

第1話 召喚されました



 何の変哲もない退屈な一日が、今日も終わろうとしている。


 ――その日、帰宅部の彼女は友人たちが部活に励む中、颯爽と校門を出て家路についた。


 三年間通いなれた通学路だった為、少し油断していたことは否めない。


 だがいくら平穏な日常に辟易していたとはいえ、どうしてその時、その後に起こりうることを予見出来ただろう。




 いつも通り、道路を横断するのに信号のない横断歩道を渡る。


 この、白い縞模様にペイントされた部分を踏んで歩くのがいつの間にか彼女の日課になっていた。


 特に意識せず白線の上に乗った途端、突如、眩しい光に包まれ……。


「うわっ、眩し!」


 反射的に目を閉じた。


 ――次の瞬間、足元の感覚が消え、浮遊感に襲われると共に、何かに引っ張られていく……。




「にゅわわゎゎゎっー!?」


 次々起こる謎の現象にアワアワとしているうちに、ドサッとどこかに落っこちた。


「痛っ! なっ、何んやこれー!? て、て、天変地異かいな!?」


 混乱しつつも、目を開けると……。


 最初に飛び込んできたのは、 まるでどこかの王城のように美麗な装飾が施された豪華絢爛な広い部屋。


 そして、彼女を冷静に見つめる男が二人。


 視界に入れた瞬間、固まった。




「どえぇぇ!? なんちゅう美形がおるんやっ。何やそのけったいな格好、ここはコスプレカフェかいな。やたらピカピカキラキラしよってっからに……ってそんなわけあるかいっ。さっきまで道歩いとったっちゅうねん。ホンマここどこや~!?」


 只今、絶賛大混乱中のはずだが、思いの外よく口が回っている。そして、どんな時でもボケツッコミを忘れない浪速根性はさすがと言えるだろう。


「……これはこれは。何とも賑やかな小娘が召喚されてきたものですね」


「おまえね。初対面の愛らしい女性にそんなことを言うもんじゃないよ。小動物みたいでなかなか愛嬌があるじゃないか」


「申し訳ありません。私は陛下と違って大人の女性が好みなものですから」


「いやいやっ、何俺が幼女趣味みたいな言い方してくれちゃってんの!? やめてくれる!?」


「おや、違うんですか」


「違いますうぅぅっ」


「それは失礼いたしました」


「……全然失礼って思ってないよねそれねっ」


 目の前で繰り広げられる、煌めく銀の短髪をもつ美青年が紫の髪の美青年へと恭しく頭を下げている光景は、背景の綺羅びやかさも相まって非日常的過ぎる。パニック寸前である。


「いやいや兄ちゃん達なんや!? 二人の世界作っとらんと質問に答えてんかーっ」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る