第10話 走る

「「はぁ…はぁ…」」


 アクトも俺も息切れを起こし、体力もぐんと減っている。あれからモンスターの出現率は大分下がった。

 外の光はまだ見えない。だが、空気の流れと香りは確実に外の物に近付いている。


「フェル君。そろそろ…」

「ああ。休憩を取ろう」


 座って走っている途中に拾った木の実を渡す。ピンクの木の実を頬張る。ピンクは非常に甘く、やわらかい、熟した実だった。甘さが疲れた体に染み渡る。次は3個一気に頬張ってみる。水分が豊富な実は乾いた喉を潤し、空腹感を満腹感へと変えていった。


「「あぁ~」」


 アクトも同じことを感じていたみたいで、顔を見合わせて笑った。


「もういけるか?」

「うん」


 俺等は再び走り出す。一時間程走った頃、光はさらに眩しくなった。


「うわっ!」

「眩しぃ!」


 俺等の頭上にはきらきらと眩しく俺等を照らす太陽があった。俺等は外に出たのだ。


「外だ」

「本当だ。凄いよ、僕等。誰も脱出できなかったロストホールから脱出したんだよ。僕等が初なんだ」

「でも、ここは?」

「多分、入った時とは真逆から出て来たんだと思う。だから、入った時の場所を探して、そこから帰ればいいと思う」


 俺等はまた走る。今度はロストホールの周りを。俺は間に合わなければならない。約束は守る。冒険者になった時、決闘を申し込まれた事はしっかりと覚えている。俺は絶対に勝つ。

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