第66話 イチの帰還

「ジェラぁーニぃぃーーー!!!!

テんメぇぇぇーーー!!

何やってんだ!コラぁぁぁぁぁーーー!!」


司令部中に響き渡る大声。



「イチーー!!!」

帰って来てくれた!伝令君がやってくれたんだ!


まだら模様の黒豹のような影を2匹まとわりつかせたイチが叫んだ。


「ぶっ殺ぉぉぉーーーーーす!!!」



イチは黒い兜をかぶり、黒い鎧を身につけ、黒いマントをたなびかせていた。


前にウエスタ戦線に一緒にいた時には見たことがなかった姿。

私を怖がらせないために鎧を脱いでいたのかも知れない。



凄いスピードで地を走っている影。

あれも悪魔なの?



「バーレント!貴様!戻ってきたのか!?

二人そろって始末してやる!若造がぁ!」


「てんめぇぇーー!俺に挨拶もなしに帰りやがってぇーー。」


「貴様の許可など必要ない!死ね!」


―――散雷弾!!

ガガガーーーーン!!


イチは散らばって落ちてくる雷を全て避け切った。

悪魔の足が速い!


「敵前逃亡で死刑にしてやるからなぁぁ!!

この俺の手でなぁぁぁーーー!!!」


―――けがれし者、その怨念を解け。怨爆砕!!

バァァーーーーーーン!!


爆発したのはマインティア様を襲っていた2本の黒い腕だった。

彼が黒い腕から自由になって飛ぶ。


良かった!

イチは周りを見ている。ただブチ切れているわけじゃない。



***



ティアが俺に近づいて来て大声で叫んだ。

「イチ!!気をつけろ!悪魔だ!」


「悪魔ぁ?ジェラーニが使役できるわけねぇだろ!」


「悪魔を自分の身に降ろしてる!2本の黒い腕だ!悪魔の腕だ!」


「なんだと!?」


悪魔を体に降ろすなんて馬鹿か?それくらいティアにキレてたのか?



「ジェラーニ!喰われちまえぇぇ!!」

―――闇に舞い堕ちし者共よ集え。闇喰いダークイーター!!



***



イチの悪魔たちは黒い鳥のくちばしのような形になって、ジェラーニに襲いかかっていった。


でも悪魔の動きが鈍いような気がする。

イチの魔力が前に見た時より弱い。


ひょっとしてイチもかなり疲れているの?

地を走るけど空は飛ばない。

空を飛んでいるのは見たことがない。

マインティア様のようには飛べないのかもしれない。


空を見上げて真っ青になっているジョイさんがいた。

ジョイさんも黒い鎧兜よろいかぶと姿だ。



「ジョイさん!!」


「ルシャちゃん!?何でこんなとこに!!危ないじゃないか!」


「イチさんは本調子じゃないの!?」


「さっきまでウエスタの最前線でバリバリ戦闘中だったんですよ!ゲートで帰って来たら、こんなことになってるなんて!いくらイチ大佐だって、体力的にキツイですよ!」


「イチさんは空を飛べないの?明らかに不利だわ!」


「飛べるんですけど、めったに飛びません。悪魔使いの飛翔術は疲れるんです。」


「どうして?」


「悪魔を大量にまとわりつかせると、体力を悪魔に奪われるんです。」


そうなのか。

でも離れた所からの攻撃では悪魔を倒すのは難しいかもしれない。



「ジョイセント!!」

マインティア様が叫ぶ。


「王宮に行け!国王と王太子を守れ!」

「えぇっ!?」

「暗殺者がいる可能性がある!必ず守れ!移動門ゲートでローランドのもとへ行け!!

他の司令部に市街地にもシールドを張らせろ!!」


「了解しました!!」

ジョイさんが私を見る。

「一緒に来るんだ、ここは危ない!」


「ジョイ!!彼女は置いていけ!」

「え!?総司令!?」

ジョイさんが困惑している。


「早く行け!!」

マインティア様が珍しく声を荒げた。


「私は大丈夫です!」

精一杯、笑った。


「はいっ!!」

ジョイさんが移動門ゲートで跳んだ。


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