第20話 ゲートマスターと戦場へ

いよいよ出発の日!

なのにジョイさんと私しかいなかった。


あれ?


「イチ大佐は先に行かれました。」


「ウエスタ方面まで馬で行くんですか?」

「ほとんどの隊員達は馬か徒歩だけど、さすがに士官は移動門ゲートで行くから時間はかからないよ。


本当は王都と戦場を移動門ゲートでつなぐことができたら楽だし、ルシャちゃんを危ない目に遭わせなくて済むんだけど。

途中に魔法網まほうもうがたくさん張ってあるから、そういうわけにもいかなくて。」


魔法網まほうもう?」


「敵のゲートマスターによる急襲をさけるために、トラップが仕掛けられているんです。魔力を感知する網…のようなものです。

それをよけながら行くから、僕の魔力の消耗も大きくてね。」


移動門ゲートを開くのって難しいんですか?」


「うーん、距離や人数によっては難しいかな?

自分一人だけなら空間を跳べる人は結構います。ゲートキーパーっていう伝令役です。

でも複数の人が通れる移動門ゲートを創生できるゲートマスターは案外少ないんですよ。


さぁ!そろそろ行きましょうか!」



ジョイさんが両方の手の平をゆっくりと前方に向けた。緑の瞳が急に真剣になる。

見たことがないジョイさんの横顔。


キィーーーーーーーーンという高い音がだんだん大きくなる。


―――偉大なる地の精霊たちよ、此の地と彼の地の絆を結びたまえ。移動門ゲート


目の前の空間に白く光る十字の亀裂が入る。


パキーーーン!!という何かが割れるような乾いた音とまぶしい光。

私は思わず目をつぶってしまった。


「さぁこっちだよ。」

ジョイさんが私の手を引いてくれる。


ようやく目を開けることができた時、もうそこはジャングルの真っただ中だった。



***


後ろを振り向いても第五の基地はなく、深い熱帯雨林が広がっていた。

王都より木がはるかに巨大だ。大きな葉の間から見える太陽はギラギラしていて、空の青さが王都より濃い。

蒸し暑くて、あっという間に汗が流れる。


一気に王都を離れ、戦場に来たんだと実感した。

胸がドキドキする。


「キャンプはこっちだよ。暑さになれるまでは体調に気を付けて。とりあえずは男ということにしてあるから。女性だとみんなすぐ気づくだろうけど、説明の必要はないから心配しないで。名前はルーだよ。」

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