　情報宇宙に起きた劇的変化は、言葉で表現するのはとても困難だ。その全宇宙的なインパクトは、人類的な感覚に置き換えるには巨大過ぎる。

　それでもここでは、言葉で書いていくしかない。

「質量」誕生の劇的変化は、例えば、このような状況を思い浮かべてくれれば、非常に近いものを感じることができるはずだ。

　あなたは、明かりのない部屋にいる。そこには外界からの光も音も届いていない。もちろん、部屋にいるのはあなた一人だ。あなたはそこで、眠っている。あなたが眠っている間、その部屋には何も変化が起こらない。だが、あなたが目を醒まし、寝ぼけた頭が徐々に世界を意識し始める。

　そのとき、どこからともなく「音楽」が流れてくる。

　その「音楽」は、あなたが聴いたことのない楽器で、記憶にない旋律で、なじみのないリズムで響いている。「音楽」が流れ出した原理も因果も、そこに込められた意味も価値も、あなたには理解できないものだ。

　それなのに、あなたはその音の羅列が「音楽」だとわかる。

　無明の部屋に、「音楽」を聴いているあなたがいる。

　瞬きをする間にも、儚く消えてしまいそうな、わずかな感情の動きに、あなたは気づくだろう。

　何一つ自分と接点のないはずの「音楽」が、単純なる音の論理的羅列が、あなたの心を刺激したことを知るだろう。

　そのときあなたは、情報宇宙で起きたあの大事件を追体験しているのだ。

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