02.遅刻遅刻!

 時間には律儀な十文字ミコが、その日に限って寝坊した事実には、何かしら運命的な意味があるのかもしれない。


 彼女は前日に教室で書き綴った手紙を入れた鞄を抱えて、目的の場所へと走り急いでいた。お約束のようにパンを口にくわえ、お約束のように「遅刻遅刻!」とパンをくわえた口で呟き、お約束のように路地を曲がろうとしたところで、思いもかけない相手とぶつかり、もんどりうってお尻から地面に倒れた。痛むお尻をさすりながら、顔を上げたが、ぶつかった相手は、なにしろヒッグス粒子だったので、彼女の肉眼では視認することはできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る