第2話

靴箱で上履きに履き替え、足音を鳴らさぬように廊下を歩く。


足にできた様々な色の痣はまるで私を道化のように躍らせる。

ひょこ、ひょこ、がくり。


廊下はいつものように静まり返る。

私は足音を鳴らしていないから、それこそおかしなパレードみたいだ。


音のない、たった一人だけの孤独なパレード。

拍手も喝采もなく、万人は皆息を呑むばかり。


ごくり、ごくり。

それがパレードのサウンドになる。滑稽なピエロと衆人の息の音。


なんて寂しい、だからこそ騒々しいパレードなんだろう。

教室の扉を開けて、パレードは終焉。


廊下はいつも通りの優しい朝の時間が流れ出す。

教室では、もう誰も私のことなんて見向きもしない。


これが当たり前。日常の一コマ。

そこに私は、いない。


傷という厄介なものを背負い込んだ今日は、いつもよりどこか儚げに時が進んでいった。


がんがんと頭の中に鳴り響いている警鐘。

ドラゴンの中に産み落とされたかのような灼熱。


ほら、やっぱり私は愚図で鈍間だ。担任がしかりつけてくる。


ただ、何がなんだかわかりゃあしない。なんて老婆を気取ってみたりして。


発熱されたこの身体は少しも言うことを聞いてくれやしないねえ。お若いの。

そんなに怒っとったら早死にするぞえ。なんて一人芝居なんかして。


にやにや笑うことだけは忘れないから、やっぱり担任は私に怒るし、クラスメイトは私を気持ち悪く見つめるばかり。


どうしようもないこんな現実に私のちいさな醜い羽は、やっぱり少し飛び立ちたそうに震えている。


かすかなその振動を私は決して逃さない。背中でいつも感じている。

いつだって飛べるように。


必要なのは、タイミングと、孤独に耐える覚悟だけ。

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