(15)

 言葉に詰まった僕を見て、セリカはクスリと笑った。


「あ、図星突かれちゃってショックだった? その何ともいえない顔、ユウト君ってホント分かりやすいね」


 いや、そうじゃない!

 リナとリューゴが付き合っていようがいまいが関係ない。

 自分は本気でリナをことを――


「違う! 僕は心からリナのことを心配してるんだ。でなかったら清家さんにわざわざ電話して、リナが無事かどうかなんて確かめないよ!」


 心の中の迷いを打ち消すように、僕はセリカに向かって叫んだ。


 余計なことを考えてはいけない。

 今はただ、リナを救い出すことだけに自分の持つすべての力を注ぐのだ。


 そうやって少しずつ積み重ねていけば、そのうちリナの気持ちも変化してくるはず――


「ふーん、そこまで必死になるんなら、そーゆーことにしといてあげる」

 と、セリカは肩をすくめた。

「で、質問の答えだけど、リナさんはまだ無事みたい。あのお色気ムンムンの魔女のおばさんも手出してないし」


「そう……」

 僕はほっとして、続けて訊いた。

「あの、地図を見る限り、リナは一つ所に留まっているみたいだけど、どこかに移動する気配はない?」


 ヒルダとシャノンがリナを連れて本国ゴートに戻ってしまう――

 それが今、もっとも恐れるべき事態なのだ。


「あれ? 質問は一つじゃなかったっけ。――ま、いっか。魔女もリナさんも女剣士も、今のところはじっとしてるみたい。もちろんこの先どうなるかは私にも分からないけど」


 せっかくアリス(実はリナ)をさらったのにその場から動かないということは、ヒルダの魔力はまだ回復していないのだろうか?

 いや、あるいは、何かまた別のよからぬたくらみを企てているのだろうか?


 ――可能性としては、後者の方が大きい気がする。


 なにしろあのヒルダのことだ。

 魔力を吸い取って失禁までさせた僕に対する怒りは、ちょっとやそっとではないはず。

 そんな彼女が、復讐リベンジの機会をうかがわないわけがない。


「だけど――」

 と、セリカは思い悩む僕に向かって言った。 

「あのおばさん魔女はリナさんのことをまだアリス王女だと信じ込んでいるわけでしょう? でも、それが嘘だとバレちゃえばどうでしょうね?」


「あっ!」


 セリカに言われてはっと気がついた。

 これから先、リナの髪と目を金色に染めた魔法の薬の効果が切れたら、その時点で即、王女が実は偽物リナだと露見してしまうではないか。

 もしそうなれば、たとえシャノンでも、ヒルダの魔の手からリナを庇えきれないに違いない。

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