(10)

「あらぁ、ユウト様って見た目によらず意外と大胆なお方なんですね」

 と、リゼットがニヤッと笑って言う。


「ちょっとユウ兄ちゃん、それってどういこと!?」

 一方、ミュゼットは怒ってむくれてしまった。


「す、すいません、みなさん、あれはそういうつもりではなく言葉のあやというか――」

 僕は三人に向かってしどろもどろになりながら訂正した。

「一刻も早くみんなを助けに行かなきゃと言う焦りから、つい魔が差したというか――」


「魔が差したってなにさ? ロゼット姉さまを脱がせようとしたのは事実なんだよね!」

 ミュゼットが僕にグッと詰め寄って問いただす。

「ユウ兄ちゃん、それって言い訳にもなってないよ」


「ウフフ、ユウト様は実は大人の女がタイプなのかしら?」

 リゼットはリゼットで、また僕の横に座って体をくっつけてきた。

「その点私はロゼット姉さまには負けない自信がありますよぉ」


「まあ、二人ともユウト様から離れさい! ご困惑されてるでしょう」

 と、そこへロゼットがグイッと割って入る。


 な、なに!

 なんなんだ、これは――!?

 

 ロゼットリゼットミュゼットにおしくらまんじゅうにされ、濃密な色気と芳香とで思わずむせ返りそうになる。


 この状況――

 うわさに聞く? いわゆる異世界ハーレムそのものではないか。


 性別なんてもう関係ない。

 こんなに美しくカワイイ三兄弟に同時に迫られるなんて、自分のような落ちこぼれ人間には分不相。

 まるで夢でも見ているような、幸せすぎる展開だ。


 が、しかし―― 

 

 だからといって忘れたわけではない。

 いや、忘れられるはずもない。

 目覚めて以来、単に聞くのが怖かっただけなのだ。

 シャノンにさらわれたリナの安否を。


 そうだ。

 いつまでも現実に目を背けているわけにはいかない。

 ここらが潮時、甘く楽しい時間はひとまず終わりにしよう。


 そう思って、僕は三人を軽く押しのけ、声を上げた。

 

「あの、みなさんの気持ちは嬉しいのですが、その前に色々お聞きしたいことが――まず、僕はどれくらいの間眠っていたのでしょうか?」


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