(7)
気絶こそしなかったものの、強烈な刺激で頭がくらくらした僕は、ロゼットに支えられながらベッドルームに戻った。
その後に、ロゼットに拳骨を食らい頭にたんこぶを作ったリゼットと、体にタオルを巻いたミュゼットが続く。
「痛ーい。もう、ロゼット姉さまったら 乱暴なんだからぁ」
と、リゼットが頭をさすりながら言った。
「ユウト様もそんなに驚かないでくださいよ。さっきはヒミツ、って言っちゃいまいしたけど、実は私たち、ここら辺りではちょっとした有名人なんですよぉ」
通称ゼット三兄弟――
しっかり者のロゼット。
お調子者のリゼット。
純情可憐なミュゼット。
彼らは昔から近所でも評判の、飛び切り美人な男の娘三兄弟だったという。
グリモ男爵に仕えるメイドとしては、まさにうってつけとしか言いようがない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さっきは薄暗かったベッドルームも、窓から差し込む朝の光で今はすっかり明るくなっていた。
いつの間にか、ロゼットがカーテンを開けてくれていたらしい。
それでもまだ気分はすぐれない。
よろめきながらベッドの縁に腰掛けた僕に、ロゼットが言った。
「ユウト様、喉がお渇きでしたね。ただいま冷たいお水をご用意いたしますので、しばらくお持ち下さい」
いちいちお願いしなくても僕が一番やって欲しいことをしてくる。
さすが完璧なメイドさんだ。
と、水を取りに部屋から出ていったロゼットに感心していると、リゼットがほっと肩の力を抜いて僕の隣にポンッと座った。
「ウフフフ、
「そうですか? 素晴らしいメイドさんだと思いますけど」
「確かに頼りにはなりますけど――ずっと私とミュゼットの親代わりをしてくれたわけだし」
「え……? 親代わり、ですか?」
「ええ、こう見えても私たち三姉妹――本当は兄弟ですけど、昔っから苦労してるんですよぉ。両親は数年前に流行病で死んじゃって――」
と、なぜか身の上話を始めるリゼット。
「他に身寄りがなかった私たちは親戚やフレンドの家を渡り歩いたりして、グリモ男爵様に拾っていただくまではメチャクチャ大変だったんです」
「はあ……」
「それに加えてですねえ、自分で言うのも何でけど、私たち兄弟は三人とも異常なまでにモテすぎちゃうというか、行く先々で色んな人に言い寄られて本当に困ってしまって」
「え……あの、その……」
僕はつい興味本位で尋ねてしまった。
「みんなリゼットさんたちが実は性別が男と知ってて告白してくるんですか?」
「ウフフ、ユウト様、もちろんそうですよぉ」
と、リゼットが色っぽく笑って言った。
「むしろ男だからこそ人気があるのかなぁ。――もう巷の女には飽きた、だから今度は絶世に美しいオトコの娘とイタしてみたい、そんなイケない男の人が多くて多くて。襲われて押し倒されて、危うく難を逃れたことも一度や二度じゃないんです」
「は!?」
なんだ……。
その
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます